1月14日のサンデータイムズやBBCは、英国ロスリン研究所がヒトの遺伝子を組み込んだGMニワトリを使い、抗がん剤やインターフェロンを含む卵を生ませることに成功し、高価な薬を安価に生産する可能性があると報じた。従来こうしたGMニワトリでは、組み込んだ機能は1、2世代で消滅していたが、このGMニワトリは5世代にわたり継続的に生産しているという。
15年をかけた今回のGMニワトリは、ヒト遺伝子を組み込んだウイルスを受精直後のニワトリの胚細胞に感染させることにより、ニワトリにヒトの遺伝子を組み込んだ。5世代をへた500羽のGMニワトリの1群は、悪性黒色腫や皮膚ガンの治療に有効な抗体の1種であるmiR24を、もう一つのグループは、細胞内のウイルスの増殖を抑えるヒトのインターフェロンb-1aを卵の白身に含むように“設計”されている。この卵から有効成分を精製することは容易であるとしている。今回使われたニワトリはISAブラウン種で、年間およそ300個の卵を生む。
同研究所は、ヒトによる治験にはさらに5年、薬として完成させるには10年かかるとし、楽観してはいない。このロスリン研究所は、世界初のクローン羊のドリーを誕生させている。
・The Times, 2007-1-14 ・BBC, 2007-1-14EUでは昨年6月、遺伝子組み換えヤギ乳由来の血栓防止薬ATrynの限定的承認を勧告している。これは、米国のバイテク会社GTC Biotherapeuticsの開発したもので、このタンパク質を作り出すヒトの遺伝子をヤギに組み込み、ATrynを作り出そうというもの。
・European Medicines Agency(EMEA), 2006-6-2 ・農業情報研究所, 2006-6-5先ごろキリンの米国関連会社が開発したプリオンフリーGM牛の場合でも同じだが、遺伝子組み換え動物によるヒト用の医薬品の生産が増えてくるのではないだろうか。日常的に口にする食品と異なり、医薬品ということであれば「遺伝子組み換え」という出自も、抵抗感が少なく容認される可能性がある。