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2月27日午後、有機農業推進法の基本計画を審議する審議会(食料・農業・農村政策審議会生産分科会)が開かれ、農水省から基本計画案(「有機農業の推進に関する基本的な方針(案)」)が示された。同時に、「有機農業の現状と課題」と題する同省農産振興課のまとめた資料が提出された。
「基本計画(案)」では有機農業は、環境保全型農業の一つの形態として位置づけられている。この位置づけに金子委員(有機農業者)や石井委員(島根県農林水産部農畜産振興課有機農業グループリーダー)が、有機農業と環境保全型農業は別であり並立して位置づけるべきだと何度か迫ったが、省側のガードは堅く「環境」でくくれれば、この位置付けで問題ないとした。この位置付けのため、有機農業者への環境直接支払いについては、「有機農業者の自主性を尊重」(農産振興課長)し、有機農業を核とする地域計画を策定した地域にのみ支援を行うとしていると考えれられる。これに対して石井委員から、「ゼロは半減できないから補助金もゼロ」(農薬や化学肥料を半減すれば相応の補助金が配分される)という発言があった。このことは、もともと削減する農薬も化学肥料も使っていない有機農業は、この支援の対象にならないという環境保全型支援の不十分さを指摘したものであった。
有機農業推進法第2条に規定された「遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として」という文言に関して、金子委員から「論点」(参院法制局作成)にはGM技術を使ったとしても適法であるとの見解が示されているが、有機農業でGMを使わないのは常識であり、この解釈はおかしいとの指摘がなされた。この点に農産振興課長は、「法解釈上、使用が可能ということであり、今のところ、現状では使わない」と回答している。わざわざ「今のところ」という発言は、状況次第ではGM使用を認めるということでもあるだろう。
有機JAS認証についても、認証費用が高額で、生産者が認定を取りにくい現状がある以上、国が補助すべきではという指摘があった。しかし、これについても一部地方自治体が認定機関となっている(表示・規格課長)というような的外れな返答に終始し、積極的に認証取得へ補助するとは明言しなかった。
何人かの委員が指摘したように、この基本計画(案)は「りっぱな文章」ではあるが具体性に欠けたものとなっている。抽象的な記述とすることで基本計画案が、有機農業推進法に書かれていることと大きくかけ離れたものとなっているように思われる。
今後は、2週間の意見募集ののち、3月下旬に開かれる最終の分科会で基本方針の取りまとめと答申という手順で進められる。農水省はこの分科会に提出した「基本計画(案)」を修正せず、意見募集を行うとしている。 28日現在、まだ募集は始まっていない。
おそらく今回提示された農水省案が、そのまま国の基本方針となると予想される。この基本方針を元に都道府県や市町村が独自の「推進計画」を策定し(法第7条)実施することになる。今後は、県や市町村レベルで、有機農業者の意向が尊重される推進計画策定へ向けた取り組みが必要となってくるだろう。第15条では「有機農業者その他の関係者」が意見述べたり、その意見を「反映させるために必要な措置を講ずる」と規定している。単に有機農業者のみならず、消費者と一緒になった有機農業運動として取り組まれるべきだろう。
・農水省 ・日本農業新聞, 2007-2-28恥ずかしい話ではあるが、日本の有機農業による農地面積や生産高という基本データを農水省は持っていない。今回の審議会に提出された「有機農業の現状と課題」では、かろうじて有機JAS認定生産者の生産高(格付数量)が示されているにすぎない。ここに、継子扱いされてきた日本の有機農業の位置が如実に現れているといえるだろう。農水省の示した基本計画(案)で、この扱いが大きく転換されるだろうか。
EU諸国では有機農業への転換に対して直接支払いを制度化している。英国の環境保護政策として2005年3月に導入された制度では、農地の全部または一部を有機農法で管理している農業者、あるいは有機農法への転換を希望する農業者に、1ヘクタール当たり最高60ポンド(約1万2千円)の補助金が支給される。2006年5月には、3つあるレベルのうち入門コースへの申請が1000件、約7万4千ヘクタールを越えたという。そのうち30%、22,539ヘクタールは有機農業へ転換中という成果を挙げている。
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