米国の食品安全センター(Center for Food Safety)は5月3日、米国食品医薬品局(FDA)によるクローン動物由来の食品解禁についての意見募集に13万人以上が反対の意見書を提出したと発表した。昨年末、FDAはクローン動物由来の肉や乳製品などは安全であり、表示なしで流通を認めると発表し、この1月以来、意見募集を行っていた。当初4月3日で締め切られる予定であった意見募集は、5月3日まで、1ヶ月間延長されていた。
FDAは広く精査された研究を調査した結果、クローン動物は安全であると判断したとしていたが、食品安全センターの調査によれば、その論文はたった3本であり、クローン動物の企業が部分的に資金援助したクローン牛の牛乳に関するものであったという。「FDAのクローン解禁の意欲は、業界からの圧力による安全無視の見本である。意見の分かれる製品解禁のために貧弱な証拠を使うことは許されない」とWenonah Hauter氏(Food & Water Watch)は語った。
クローン推進論者は、クローン動物がより良質で安価な肉製品と乳製品を供給できると主張している。こうした見解に米国の消費者同盟の食政策研究所のChris Waldrop氏は、これは事実ではないとし「消費者はクローン動物由来の食品を望んでもいないし必要ともしていない。クローンが、より安全でより安価な肉や牛乳を生産することはない。クローン牛により多くの牛乳を生産させることは、牛乳を安くすることはない。米国では需要より多くの牛乳が生産され、政府は余剰の買い上げを余儀なくされ、1999年以来、酪農支援に50億ドル以上かかっている」という。
FDAは、提出された意見を検討し、年末までにクローン動物由来の食品について決定するだろうとしている。
・Center for Food Safety, 2007-5-3昨年12月に公表された世論調査によれば、クローン動物由来の食品対して64%が懸念を示している。
Public Sentiment About Geneticaly Modified Food
このクローン動物の解禁に関してEUも動き出している。欧州食品安全機関( EFSA:Europian Food Safty Authority)は4月27日、クローン動物に関する全般的な科学的データを5月29日までに提出するよう要請する声明を出した。同機関は、この問題に取り組むために科学委員会に作業部会を設けた。要求されているデータは、クローン技術そのものから、クローン動物とその子の健康と福祉、食物としての安全性などが列挙されている。
このEFSAの要請についてDecision News Media SAS は5月2日、EFSAは提出されるデータを検討し5ヵ月以内に、食品として流通を許可するかどうかの結論を出すとしている。現在、EUにはクローンを規制する規則はない。しかし、今年に入って英国で輸入されたクローン牛とその子牛が見つかり、EU当局は、クローン規制に関して判断を迫られている。
・Decision News Media SAS, 20070502