米国サンフランシスコ連邦地裁は5月3日、モンサント社の遺伝子組み換えアルファルファの商業栽培について、その認可に当たって米国農務省(USDA)の環境影響評価が不徹底であったとして新たな栽培禁止の判決を下した。この判決では、農務省は認可の前に、このGMアルファルファによる環境と従来のアルファルファ品種に対する影響を科学的に調査しなければならないとしている。また判決は、すでに野生や有機栽培のアルファルファに対するGMの汚染が起こった点に留意し、「こうした汚染は、回復できない環境被害であり、汚染は回復できない」としているという。
栽培禁止の範囲は米国全土に及び、農務省が環境影響評価の調査を終えるまでとしている。この判決に農務省動植物衛生検査部(APHIS:Animal and Plant Health Inspection Service)のスポークスマンは、「GMアルファルファの完全な環境影響評価の計画を立てる」と語ったという。当局はこの調査に2年間かかるとしているという。判決はまた、すでに作付けされたGMアルファルファの収穫禁止や、このGMアルファルファの種子を目的とする栽培について禁止はしていない。
判決はまた、Forage Genetics社(種子販売会社)に対して、30日以内に米国全国の全てのGMアルファルファの栽培地を明らかにするように命じ、農務省にこのデータがすぐに利用できるようにするよう命じた。これは、非GMアルファルファを栽培している生産者が、GM汚染の有無を検査できるようにするためであるという。
同地裁では3月に栽培禁止の予備的判決が出されていた。これに対して農務省は3月31日までは播種を認めるとする通達を出していた。これにより米国全体で、すでに約22万エーカー(約9万ヘクタール)で植え付けが終わっているという。アルファルファは、主に飼料用として米国全体で約2100万エーカー(約850万ヘクタール)で栽培されている。
・Reuters, 2007-5-3 ・AP, 2007-5-3 ・Center for Food Safety, 2007-5-3この裁判は2006年2月、農務省の販売許可の差し止めを求めて、シエラクラブなどの環境団体や消費者グループも加わり提訴されていた。その理由として、この遺伝子組み換えアルファルファの認可に関して、環境調査が不完全であること。許可された場合、農家の望まないGMのアルファルファと容易に交雑し遺伝子汚染がおき、不当な特許料の支払いを強制されること。さらには、主要な輸出相手国の日本と韓国が、汚染の可能性のある米国産アルファルファの輸入を減らすことにより、年4億8千万ドルを失うことなどをを挙げていた。
・REUTERS, 2006-2-16今回の判決で注目されるのは、カルタヘナ議定書を批准していない米国が、その議定書で規定する栽培品種をも含む「生物」へのGM汚染の影響を考慮している点である。カルタヘナ議定書を批准した日本では、2003年に国内法としてのカルタヘナ法(「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」)が制定され手いるが、この法律の対象は「野生生物」に限る、というすり替えが行われている。したがって、栽培品種への交雑の可能性は一切考慮されない、ということになっている。モンサント社のGMアルファルファについて行われた生物多様性影響評価の資料は、下記で部分的に公開されている。
・農林水産技術会議飼料として開発されたモンサント社のGMアルファルファは、日本ではすでに飼料としてはもちろん、05年10月14日に食品としても承認されている。食品としての表示義務も課せられている。
・厚労省