欧州特許庁(EPO:European Patent Office)は5月3日、遺伝子組み換え大豆に関するモンサント社の基本特許(EP 0301749) の無効を決定した。決定は、この基本特許の一部に新規性がなく、その発明が再現できる方法で記載されていなかったことによるものという。今回の審判は、この特許が認められた1994年、ETCグループとシンジェンタ社などが申し立てにより行われていた。この特許については、当初モンサント社は無効を申し立てていたが、元々この特許を所有していたAgracetus社を1996年に買収し、この申し立てを取り下げていた。
この基本特許は、あらゆる遺伝子組み換え品種と特に大豆に及び、植物と種子に対して認められた最も広範囲な特許の一つであると見られていた。この技術は、「パーティクル・ガン」と呼ばれる方法で、小さな金属の粒に導入したい遺伝子を付着させ、目的の植物細胞に打ち込むというもの。
ETCグループは、この特許無効の決定を歓迎する一方、この決定までに13年を要したことを「恥ずべき」ことと批判している。
モンサントのGM大豆シェアは世界の90%に達し、GM大豆は世界の大豆生産の60%を越えたと見られている。こうした状況に、ETCグループのHope Shand は、「モンサントの特許は、農業における経済的な安全保障を蝕み、種子に対する権利を蝕んでいる。種子をコンとロースするものが、食料の供給をコントロールする」という。ETCグループが発表した“世界の種子会社トップ10”によれば、モンサントは、種苗市場の20%以上を押える世界最大の種苗会社である。モンサントが欧州市場へのアルゼンチン大豆の参入を否定するためにその排他的な独占を使うため、アルゼンチンの大豆農民は、モンサントの広範囲に及ぶ特許に直接的な影響を受けている。モンサントは、アルゼンチンが同社のGM大豆種子に対する特許料を支払っていないと主張している。
Hope Shand は、「欧州特許庁が13年かかってもモンサントの特許を取り消すことが出来なければ、企業が市場を独占するために不当な特許を使い、競争を破壊し、食料主権に対する世界的な闘いを破壊することができることを、ただ、確認するだけだ。」と語り、「生命特許 No!」("No patents on Life!")の Ruth Tippe は、「モラルに反する不当な特許に対する個別的な法廷闘争は、実行可能な戦略ではない。欧州は、明確に生命特許を禁止する特許法を必要としている」という。
・ETC, 2007-5-3