野菜や花などの新品種を開発した人や法人(育成権者)の権利保護と権 利侵害への罰則強化などを盛り込んだ改正種苗法は5月11日、衆議院本会 議で全会一致で可決、成立した。これにより、登録品種の違法な増殖など 育成権の侵害に対して、現行の懲役3年、罰金3百万円を、懲役10年、 罰金1千万円と大幅に引き上げ(67条)、両罰規定として法人の罰金は3億円 まで引き上げた。さらには、権利侵害による損害額を裁判所が認定できる ことや、裁判所が関係文書の公開を禁ずる秘密保持命令が出せるようにな る。この改正種苗法は12月1日より施行される。
この改正は、昨年12月の「植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関 する検討会」の最終報告を受けて、この2月に国会の提案されていたもの。 罰則強化が図られる一方、種苗に対する登録品種の表示の義務化は見送ら れ「品種登録表示を付するように努めなければならない」(55条)とされ、 育成権者に有利なように規定されている。これでは、自家増殖の前に登録 品種であるか確認せざるを得ない。この表示のあいまいさは、自家増殖へ の牽制といえるだろう。
農水省はこの3月、「農林水産省知的財産戦略」を公表した。その中で農林水産分野の「知的財産」として「植物新品種」「動物等の遺伝資源」「農産物、地域食品等の商標、ブランド」などを挙げている。具体的な施 策には新品種開発に「遺伝子特許の取得」をあげている。また開発に対応する「知的財産の保護強化」も目標にあげ、権利侵害には「品種保護Gメンの増員」「DNA品種識別能力の向上」などを列挙している。
・農林水産省知的財産戦略本部, 2007-3-22現在のところ農家における種苗の自家増殖は容認され、農水省の省令で例外として増殖を禁止する品種81種類を決めている。しかし、将来的には、この農家の自家増殖は原則禁止とする方向転換が図られようとしているという。「知的財産戦略」では施策として遺伝子の特許取得が挙げられているが、この1月に開かれた「植物新品種の育成者権強化に向けた法改正」に関する農水省種苗課の説明会でも、こうした遺伝子特許に関する自家増殖の制限について、明確には否定されなかった。こうした点を見ると、将来、特許化された遺伝子を含んだ品種の自家増殖が実質的に禁止される事態も無いとはいえない。その場合、営々とタネ採りが続けれてきた在来種や固定種が除外されることはないだろう。この点については下記に詳しい。
・やすだせつこ.com, 2006-12-24