農水省は5月15日、花粉症緩和GM米など2品種の遺伝子組み換え作物の第一種使用規程(何らの隔離などの防止措置もとらない栽培)について意見募集を始めた。締切りは6月13日。
・農水省, 2007-5-15今回、意見を募集する遺伝子組み換え作物は下記の2品種。花粉症緩和GM米は、つくば市の作物研究所と農業生物資源研究所の隔離圃場に限定されているが、高リシントウモロコシには限定は付けられていない。
今回で27回目となる遺伝子組み換え作物に対する意見募集(パブリック・コメント)について、2004年3月以来の24回の提出意見数と当局(農水省、環境省)の回答を見ると、明らかに制度疲労を起こしているといえるだろう。制度の始まった当初は、意見を出す側にそれなりの“期待”があったかに見える。花粉症緩和GM米などが案件となった第2回では243通の意見提出があった。それも2005年11月にはその期待感も無くなり、それ以後提出される意見もかろうじて各回1、2通を保っているに過ぎない。提出意見に対する回答は、意見に真正面から答えているとは思えないものが多い。例えば第20回(2006年7月、除草剤耐性・優勢不稔ナタネ)には次のような意見と回答(対応方針)が記録されている。
●意見
生物多様性条約では、「生物の多様性」とはすべての生物の間の変異性と定義されており、その全ての生物の間の変異性に対する影響を評価する内容となっていない
●回答(対応方針)
カルタヘナ法に基づく遺伝子組換え生物の生物多様性影響評価においては、すべての生物の間の変異性に対する影響を評価するのではなく、現在の科学的知見等に基づいて、対象となる遺伝子組換え生物の第一種使用等によって、野生動植物の種又は個体群の維持に支障を及ぼすおそれがあるか否かを評価することにより、生物多様性影響のおそれの有無を判断することとしています。
提出意見は日本も批准したカルタヘナ議定書の定義をもって、環境影響評価書の内容が「全ての生物の間の変異性に対」して評価していないとしている。それに対して回答は、議論をカルタヘナ議定書に対応する国内法のカルタヘナ法にすり替え、その対象を「野生生物」に限定して回答している。対象とする「生物」について、カルタヘナ議定書の定義とカルタヘナ法の定義が異なっていることが問題であることは明らかだ。ことにナタネに関しては、栽培ナタネとの交雑が大きな問題となるのに、現実に口をつぐみ、眼を塞ぐ姿勢といわざるを得ない。遺伝子組み換え作物の推進、という方針の前に建前だけが優先されている。
このように、国の側に、国民の意見と真正面から取り組む姿勢のない意見募集(パブリック・コメント)は、“見捨てられている現状”があるといえるだろう。しかし、農水省をはじめとする政府当局は、この制度により「国民の意見を聴きおいた」としているのが現状である。遺伝子組み換え作物に関しては、意見募集(パブリック・コメント)は、あらかじめ結果の分かりきったゲームのようなものといわざるを得ない。こうした「蛙の面に小便」状況を理解した上でも、意見を言っていくべきなのだろうか。