農水省は5月18日、4月に公表したカーギル社ドッジシティー工場より出荷された牛肉に月齢不明の牛タン4箱が混入していた件について、混入した牛タンは20ヶ月齢以下という条件を満たしていないとする米国農務省の報告書を公開した。これによると、原因は、日本向けでない4箱に、あらかじめ日本向けのラベルを貼ってあった蓋を使用した作業ミスにより混入したとしている。
・農水省, 2007-5-18 ・米国農務省, 2007-5-18 ・農水省, 2007-4-6この報告書では、この混入の原因となった蓋の扱いについて次のように書いている。
マニュアルでは、特にこれらの蓋の撤去を具体的に記述しておらず、また、箱の蓋の置き場所についての正しい手順は具体的に規定されていない。従業員は、日本向けでないタンの箱に対日輸出用ラベルを貼付けた蓋を使用した際、対日輸出用ラベルが貼付けてあったことに気付かなかった。
マニュアルに関して言うならば、過去、農水省と厚労省の「査察チーム」が念入りに調べて問題なしとしていた。しかし、このような単純な「作業ミス」を誘発するマニュアルであったということは、過去の「査察」の中身が知れようというもの。過去に公表されている査察報告書からは、日本向け作業に立ち会っての“査察”が実施されたとは読み取れず、単なるドキュメント検査に過ぎない“査察”であったとしか理解できない。いうならば「ザル」だったということだ。これまでの米国産牛肉の条件違反事例は、みな“作業ミス”で片付けられてきた。これを認めたうえで言うならば、こうした単純なことも遵守できないとなれば、どのような条件違反があっても不思議は無いといわざるを得ない。もし証明書や月齢の改ざんがあったとしても、事が単純でない以上、今までの違反事例と異なり明らかにならないまま流通することになるだろう。少なくとも、単純な作業ミスを原因とする違反事例は今後も起きるだろう。
5月22日から開かれる国際獣疫事務局総会において、米国が「管理されたリスクの国」という評価を得たとしても、完全な飼料規制の実施を含めて、疑念を払拭することができる明確なシステムを米国側が提示できない限り、日本の消費者の米国産牛肉への疑念と不信が止むとはない。