
新たなGM汚染の可能性も
米国コーン生産者財団(ACGF:American Corn Growers Foundation)は5月18日、米国の多くの大型穀物エレベータ(集荷施設)でGM種と非GM種の分別が行われておらず、このことが米国のトウモロコシ輸出の減衰の原因で、将来的に輸出市場を失うことになると警告する調査結果を公表した。
これによれば、全米18州の1057の大型エレベータのうち、GM種の分別を行っているのは26%にすぎないという。これは2005年より約2%減少している。米国コーン生産者財団(ACGF)と全国コーン生産者協会(ACGA)は、農民とエタノール業界に対して、このことが、GM品種、特に2007年4月にオランダ・ロッテルダムで見つかった欧州未承認のGMトウモロコシのようなBtコーンにより、トウモロコシ輸出市場を失うことになると警告して いる。
米国農務省のデータによれば、最も重要な輸出先であるEU27ヵ国へのトウモロコシ・グルテンの輸出は、2006年9月から3月までの間に前年に比べ38.1%減である。外国による要求は、コーン・エタノール業界にとって非常に重要である。2000年にEUは、米国から約580万トンのコーングルテンを輸入していた。2006年には米国の輸出は360万トンにまで落ち、EUへは265万トンであったという。
ラリーミッチェル(AGCA理事長)は、「何を買うかを決めるに際して「消費者は常に正しい」ということを思い知る時で」あり、「農民は、国内エタノール業界の成長により歓迎すべき変化として強気のコーン価格を実感している。そして、蒸留酒業界と同様に輸出市場を必要としている。バイテク企業は、米国は、それが望む品種を栽培できなければならないと説くが、それは、過去10年にわたる米国の「輸出志向」農業政策の失敗と傲慢をもたらした。輸入業者は米国穂信頼を失っている。輸出セクターとバイテク企業の両者がその傲慢な方針を再考するときだ」としている。
・American Corn Growers Foundation, 2007-5-18こうした中、シンジェンタ社のBtコーンMIR604(商品名 Agrisure RW)について、「スターリンクの影」が忍び寄ってきているという論調も出てきている。日欧における承認のないままシンジェンタ社は、今年度の栽培用にMIR604の種子の供給を開始をアナウンスし、生産者団体から反発が起きている。シンジェンタ社は、MIR604の栽培面積は0.5%の約45万エーカー(約20万ヘクタール)であるとしている。日欧、特に日本での承認が降りていないMIR604の栽培開始について、生産者団体や輸出業者団体のみならず輸送業者までが、その花粉による汚染、流通段階での混入を危惧している。MIR604について問題なしとしているのは、米国内のエタノール産業のみであるという。
・Agriculture Online, 2007-5-222005年度に米国の輸出したトウモロコシは21億4700万ブッシェルで、その約30%(約1600万トン)が日本向けであった。日本での承認が、新品種栽培の大きな要因となっていて、モンサントなどは、日本での承認を待って遺伝子組み換えトウモロコシの新品種の販売開始を行っているという。輸出業者は、未承認品種の混入による輸入停止や廃棄・積戻しを懸念している。2005年に発覚したシンジェンタ社の未承認GMトウモロコシBt10の混入では、同年5月の検出以来合計16回検出され、合計約4万1千トンが廃棄又は積戻しとなっている。
・(独)肥飼料検査所, 2006-10-52006年度の貿易統計によれば、米国から輸入されたトウモロコシは約1634万トンであり、飼料用が約72%(約1180万トン)が、コーンスターチが約22%(約345万トン)である。
米国の生産者団体の一つ全米コーン生産者協会(NCGA:National Corn Growers Association)は、米国での承認済みのGMトウモロコシ23品種について、日欧の承認状況のリストを公開し注意を喚起している。
・National Corn Growers AssociationMIR604は2006年10月、日本の生物多様性影響評価について承認済みである。現在、食品安全委員会遺伝子組換え食品等専門調査会で食品としての安全性の審査中である。2007年4月16日に開催された第47回専門調査会では、アレルゲンに関する解析の不足などを理由に追加資料の提出を求められている。同専門調査会は、このMIR604について、食品としての安全性審査が終了してから飼料について審査するとしている。審査の見通しについては明らかにしていない。
・遺伝子組換え食品等専門調査会 ・生物多様性影響評価検討会総合検討会, 2006-10-5穀物エレベータでの分別割合の低下傾向は、「遺伝子組み換えでない」として輸入される米国産トウモロコシの信頼にもかかわってくる。さらには、非GMトウモロコシの入手がより困難になることを示している。また、シンジェンタ社はMIR604が確実に分別が出来るとしているが、生産者団体などの危惧するように、未承認の状態で新たな混入・汚染が起きる可能性は否定できないだろう。