最終更新日:2011年11月26日
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2011年11月の農と食

2011.11.26 No.530
■【堆肥汚染】南関東は平均約200ベクレル
    東京都・堆肥汚染調査から推定する

 東京都は24日、都内の堆肥の放射能検査結果を公表した。検査を希望した農家の堆肥を、小笠原を含む都内の29区市町村、129検体を検査したもの。このうち13検体が、(そのレベルが妥当かどうかは別として)農水省による暫定許容値400ベクレル/Kg を超えた。Cs134とCs137の合計がちょうど400ベクレルの検体も含めると14検体、約10%が暫定許容値を超えている。

 東京都内のほぼ全域で、平均約160ベクレルの汚染が見つかっている。小笠原の落葉堆肥ですら13ベクレルのCs137が検出されている。いずれも、多くが落ち葉か剪定枝、あるいは両方を材料としている堆肥であり、これらからより高い放射能が検出されている。

 ・東京都産業労働局, 2011-11-24

 平均では、落葉だけの堆肥が約240ベクレル、剪定枝だけの堆肥が約204ベクレル。その他は牛ふん、馬ふんなどが主な原材料の堆肥で約56ベクレルにとどまっている。大雑把に南関東では、落葉や剪定枝を主な原材料にした場合、平均値として200ベクレル前後の汚染がありそうである。

 東京都内の原材料別堆肥汚染(平均値)[Bq/Kg]
区分 Cs134 Cs137 Cs134+Cs137
全体 74.9 90.2 165.1
落葉主体 92.7 116.6 209.3
落葉だけ 106.4 132.8 239.2
剪定枝主体 76.5 97.7 174.1
剪定枝だけ 90.9 113.4 204.3
その他 33.3 23.1 56.4

 公表された東京都の調査結果では、原材料の出所や、材料の落葉や剪定枝がいつのもかは不明。堆肥の保管状況についても、屋外なのか、覆いがしてあったのか、屋内保管だったのかも不明である。その地域、あるいは周辺の原材料を使った堆肥とすると、神奈川などを含む南関東でも、少なくとも同程度の汚染の可能性があるとみた方がいいだろう。

 この場合、例えばキロ当たり200ベクレルの汚染された堆肥を、反当たり1トン入れると、平米当たりでは、200ベクレルの放射能が増える計算になる。当然のことながら、汚染堆肥を使えば使うほど、汚染は大きくなる。今年の各地の作物の調査結果から、一般に、作物による放射性セシウムの吸収は小さいらしいことが分かってきた。福島県二本松市の有機農家の夏野菜は、ほとんどが不検出であったという。であれば、外部の汚染された原材料を使った堆肥を使えば使うほど、圃場の放射能濃度が増えることになる。放射能の増加した圃場で、放射能を吸収しやすいといわれるアブラナ科やアカザ科は、より作りにくくなる。栽培を続けながら除染する技術の開発が望まれる。

 神奈川県では、東京都のような調査の動きが見えない。やる気が見えない、といった方がよいかもしれない。11月4日に行われた有機生産者への説明会でも、業者にデータを出させるだけで済まそうとしていて、自らデータを取ろうとする姿勢はなかった。農家の持込みによる検査も行わない、と明言している。

 従来、神奈川県はエコファーマーの認定を取るように誘導してきた。そのなかで、堆肥の使用も推奨していた。「神奈川県持続性の高い農業生産方式の導入に関する指針」(2008年3月)では、最初に「1 土づくりに関する技術 ①たい肥等有機質資材施用技術」と堆肥の使用を推奨している。

 ・神奈川県, 2008-3

 この堆肥が、放射能で汚染されていることが明らかになってきた。隣接する町田市では7月に、町田市内の剪定枝を原材料とするチップ堆肥から、暫定許容値(そのレベルが妥当かどうかは別として)を超える580ベクレルの放射性セシウムが検出されている。その後も200ベクレル前後の放射性セシウムが検出されている。

 ・町田市

 こうした隣接地域での汚染が分かっていながら、堆肥の放射能検査に全く手をつけようとしない神奈川県のやる気のなさは、これまでの堆肥の推奨が口だけのものといわれても反論できないだろう。報さyのに汚染された堆肥を使いながら、「エコ」ということに矛盾は感じないものと見える。施策の整合性が問われているが、現場を含めて考えているかも疑問だ。高額の検査費用負担を前にして、堆肥の放射能汚染を心配している農家は多い。