最終更新日:2013年3月16日
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2013.03.16 No.547
■TPP:農業生産の減少は
   国際的な食糧価格上昇を招かないか

 3月15日の阿部首相のTPP参加宣言に関し、農産物への影響が約3兆億円の減少という政府見解が明らかにされた。公表された試算シナリオ「農林水産物への影響試算の計算方法について」は、次のようないくつかの仮定の上の試算している。

  • 卸売価格で計算
  • 競合する国産品は、原則として、対象国の輸出余力分だけ 安価な輸入品に置き換わる。残存する国産品の価格は、関 税分のみ減少。
     生産減少額=国産品価格×競合する国産品生産量
  • 競合しない国産品は、安価な輸入品の流通に伴って価格が 低下する。競合する国産品が輸入品に置き換わる部分の価 格低下率(内外価格差÷国産品価格)の1/2の割合で、 競合しない国産品の価格が低下すると見積もる。
     生産減少額=価格低下分×競合しない国産品生産量

 その上で、農産物2兆6600億円、林水産物3000億円が減少すると見積もっている。主な品目の減少は次のように見積もられている。

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米    32% 約1兆100億円

国内生産量の約3割が輸入に置き換わる。それ以外の国内生産は価格下落
小麦   99%  約770億円
国内産小麦をセールスポイントとした小麦粉用小麦を除いて置き換わる
大麦   79%   約230億円
主食用、味噌用は残る
砂糖  100% 約1500億円
すべて置き換わる
トマト 100%   約270億円
加工要はすべて置き換わる
牛乳   45%  約2900億円
乳製品
鮮度が重視される生クリーム等を除いて全て置き換わる。飲用乳は、大部分が北海道産に置き換わり、他府県は全滅
牛肉   68%  約3600億円
4等級及び5等級は残り、他               は一部を除いて置き換わる
豚肉   70%  約4600億円
銘柄豚以外は置き換わる
鶏肉   20%   約990億円
業務・加工用の1/2が置き換わる
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 このほか、でん粉原料作物は100%、いんげんや小豆は高級和菓子用を除いて輸入に置き換わる一方、こんにゃくと茶はほとんど減少しないとみている。

 ・内閣官房, 2013-3-15

 農水省の米についての試算は、約3割が輸入に入れ換わり、その価格はキロ117円まで下がると見積もっている(この減少分が6500億円)。残った国産米も、銘柄米であったとしても26%の価格低下を生ずると見積もっている。しかし、試算シナリオでも「短粒種の増産が行われることも想定されるが、その拡大ペースや規模は現時点では予測が困難」と述べているように、この見積もり以上の下落をもたらす可能性も否定できない。

 さらに問題となるのは、食糧価格が上昇している状況で、日本が輸入することによる、国際的な食糧価格のさらなる上昇の可能性である。食糧貿易の流れが変わることで、食糧を得られない、得にくくなる人々が増えることは願い下げである。作れる“作物”は作ればよい。TPPの対極にあるのは、生産者と消費者が直接的に結びつく協同組合的な関係、というのはあまりに牧歌的だろうか。