モンサントは1月8日、除草剤耐性遺伝子組み換え小麦の実用化が近いと語った、とロイターが報じた。モンサントは2004年、日本を含む消費者や生産者の反対に直面し、ラウンドアップ耐性小麦の商業栽培を断念している。
・Reuters, 2014-1-8●除草剤耐性GM小麦はあきらめたのでは
その後2007年に入り、米国小麦協会と全国小麦生産者協会の共同バイテク委員会は、シンジェンタ社の遺伝子組み換えによるフザリウム耐性小麦を導入しようとして、カナダとオーストラリアの業界団体に呼びかけていた。
2009年5月、米・カナダ・オーストラリア3カ国の大手小麦生産者団体はGM小麦の商業栽培を求める共同声明を発表した。これに対し、米国、カナダ、オーストラリアの3カ国の生産者団体や消費者団体、環境団体など15団体が商業化反対の共同声明を公表した。日本からは生協や有機農業関係団体など80団体が賛同署名している。
モンサントは2010年8月、耐干ばつ・耐病性GM小麦開発を目的として、オーストラリアの大手種苗会社インターグレイン社へ20%の資本参加した。このようにGM小麦開発のターゲットが、干ばつ耐性やカビ毒のフザリウム耐性などに向かっていると報じられてきた。一昨年5月、野外試験栽培の実施を巡って近隣の有機農家とトラブルとなった英国のロザムステッド研究所が開発していたGM小麦も、除草剤耐性ではなくアブラムシ耐性品種である。
昨年5月、モンサントが2004年に商業化を断念したGM小麦の自生が発覚している。しかし、昨年7月の公式発表を最後に、このGM小麦汚染についての情報は出て来なくなっている。モンサントや米国農務省は、原因が明らかになっていないまま、「バイオ・テロ」説を含めて、他では起きていないとする「孤発性」で押しきろうとしている。
●除草剤耐性GM品種が除草剤使用量増加の原因
モンサントは、この自生が明らかになった除草剤耐性GM小麦をすべて廃却したと言明している。しかし、今回リリース間近とした除草剤耐性GM小麦がどのようなものかは明らかにしていない。ラウンドアップ以外のジカンバなどにも耐性のあるものかもしれない。
こうした除草剤耐性GM品種の栽培拡大が、除草剤使用量の低減といううたい文句とは逆に、その使用量の増大とともにスーパー雑草の登場と拡張を招く、という状況を引き起こしている。GMコーンの開発企業の一つでもあるパイオニアが毎年公表している北米におけるスーパー雑草の情報では、その状況が悪化する一方であることを示している。
米国農務省は、新たなモンサントのジカンバ耐性GM品種と、ダウ・ケミカルの2−4、D耐性GM品種の商業栽培規制の緩和に向けて審査中である。2012年に発表されたモーテンセンらの研究では、この商業栽培の開始が、トータルで更なる除草剤使用量の急増を招くと予想している。こうした目先の“解決策”よりも将来を見据えた方策こそが、スーパー雑草という袋小路から抜け出し、本来の意味で「持続可能」な方策であることは言うまでもないはずだ。
・BioScience, Volume 62, P.75-84【関連記事】