スリランカ政府は3月12日、カドミウムとヒ素を含んだ土壌でラウンドアップが使われた場合、重い慢性腎臓病(CKDs)の原因であるとして、ラウンドアップの販売を禁止した。1990年代中ごろに見つかったこの病気は、40歳前後の人に多く、すでに40万人以上が発症し、2万人が死亡したとみられている。この措置は、2月の発表されたラジャラタ大学の研究者らの研究に基づくもので、マヒンダ・ラジャパクサ大統領の指示によると発表された。
この重い慢性腎臓病(CKDs)は、土壌中や化学肥料に含まれるヒ素やカドミウムなどの重金属と、除草剤として散布されるグリホサート(商品名ラウンドアップ)による複合体が、飲料水やコメを通して摂取されて発症するというもの。グリホサート自体の毒性は弱くCKDsの原因とはならないものの、重金属と結び付いた場合の強い毒性を持ちCKDsの原因になるとしている。
研究を発表したジャシュマナ博士は、この慢性腎臓病(CKDs)はスリランカにとどまらず、インドの一部、ベトナムのメコン川流域、中南米(エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラと南部メキシコの太平洋岸)、エジプトの一部にその可能性があるとしている。
ジャシュマナ博士はまた、この慢性腎臓病(CKDs)は途上国での病気であるため、世界的には知られることもなく、注目もされないとも述べている。
・Colombpage, 2014-3-122014, 11(2), 2125-2147 / 2014,2,20
Channa Jayasumana 他
・Sustinable Puls, 2013-3-24
ジャシュマナ博士はよれば、化学肥料を使わないスリランカの伝統的な耕作のやり方に戻すことでCKDsを解決できるとしている。そのような耕作方法のコストは、農薬と化学肥料を使った場合の補助金を加えても、低く抑えることができるとしている。すでに、40ヘクタールを転換し、2千ヘクタールの転換計画が進んでいるという。
コロンボページ紙などによれば、スリランカ政府もまた、治療費の負担やきれいな飲料水の供給への投資などとともに、農民に対して有機肥料の使用を推奨し、4万ヘクタールの水田を有機肥料による耕作へと転換する計画としている。
●日本は問題ないのか コメのカドミ汚染に対策
日本ではコメのカドミウム汚染が問題となっている。農水省はカドミウム含有状況の調査結果を公表し、2011年には「コメ中のカドミウム濃度低減のための実施指針」を策定している。食品衛生法では、玄米や精米に含まれるカドミウムは0.4ppm以下とされている。2010年産米でこの基準を超えたのは1地点だけとなっている。日本の重金属やラウンドアップの使用状況がスリランカと異なっているのかは不明だが、問題はないのだろうか。ちなみに、産業技術総合研究所地質調査総合センターが、全国の元素別の分布地図を公開していて、ヒ素やカドミウムが偏在していることが分かる。
・農水省・農水省, 2011-8-4
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