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最終更新日:2014年6月12日
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2014.06.12 No.623
■小麦にも遺伝子組み換え
 GM小麦推進を再確認した米加豪関連団体
イメージ:小麦

 世界の小麦輸出量の約4割を占める、米国、カナダ、オーストラリアの小麦生産者団体など関連する16団体は5日、遺伝子組み換え小麦の商業化へ向けた共同声明を公表し、主要な主食作物である小麦のGM商業化へアドバルーンを揚げた。2009年にも同様な声明を9団体で公表しており、今回の声明は、09年声明を再確認するものとしている。

 声明では、商業化はまだまだ10年単位の先のこととしているが、GM小麦に特別な規制を持ち込まないことや、未承認であっても「低レベルの存在(Low Level Presence)」という混入も認めるようにように要求している。

 これまで、コメや小麦といった主要な主食作物へのGM導入は、一見して“慎重”とも思えるようであったが、アジアでのGMゴールデンライスの商業化への動きとともに、本格的に主食に手を突っ込んできたと考えてもよいだろう。TPPでも交渉されている知的財産権で「保護」されるGM種子は、何を作り、何を食べるかといった食料主権を多国籍企業の手にゆだねることになる。

 2009年の共同声明に対して、2010年には日本を含む世界26カ国、233の生産者や消費者の団体がGM小麦商業化拒否の声を上げている。

 ・プレスリリース(和文), 2010-2-10

 2010年1月に米国の農家や消費者団体などの地域ネットワーク Western Organization of Resource Councils が公表したレポートでは、米国でGM小麦が商業化された場合、EUや日本が輸入禁止にするとともに、40%以上の価格低下を招くとの分析している。昨年5月に米国で発覚したモンサントのGM小麦の自生問題では、日本や韓国は一時的に輸入禁止に踏み切っている。09年に引き続いて米加豪3各国が連合してGM小麦商業化を再確認した背景には、輸入禁止できない状況を作り出し、価格低下の防止といった生産者側の対応も見て取れるだろう。

 ・Western Organization of Resource Councils, 2010-6

 ●小麦をあきらめていないモンサント

 昨年5月のモンサントの除草剤耐性GM小麦の自生問題は、いまだに原因が明らかになっていない。にもかかわらずモンサントは今年1月、除草剤耐性GM小麦の実用化が近い、とロイターに明らかにしている。04年に除草剤耐性GM小麦の商業栽培を断念したモンサントが、その後も決してその商業化をあきらめていないということだ。

 世界中で種子企業の買収を進めるモンサントは、2010年、オーストラリアの小麦種子最大手インターグレイン社へ資本参加し、その20%を手中にしている。昨年2013年6月には、その出資比率を26%にまで上げている。

 ・Inter Grain, 2013-6-28

 ●消費者無視の「低レベルの存在」容認要求

 今回の共同声明は、GM小麦に対して未承認であったとしても「低レベルの存在(Low Level Presence)」を認めるように要求している。昨年秋より中国は、未承認品種の混入を理由とした米国産トウモロコシの輸入を拒否している。こうした事態への対応とも思われるが、わけのわからぬものを食べさせられる消費者にとってはとんでもないことだ。ちなみに日本では、飼料についてのみ未承認品種の1%までのLLPが、日本と同等国での承認を条件として認めている。

 LLPとは別に、GM表示不要の「意図せざる混入」問題もある。世界的に1%前後に設定されている場合が多いが、日本では承認品種について「意図しない混入」が5%まで許容されている。これでは、コメや小麦のように直接消費する穀類では、消費者の意図の反してGM作物・食品を食べてしまうことになり、問題だといわざるを得ない。

※GM表示規制値
0.9% EU、スイス、ロシア
1% 中国、オーストラリア、
ニュージーランド
3% 韓国
5% 日本、カナダ、台湾

 アジアでは、フィリピンやバングラデシュなどでGMゴールデンライスの商業栽培が目前ともされている。そして、今回のようなGM小麦の商業化へ向けた動きが出てきている。その一方で、世界的には、フランスなどの一部のEU加盟国や、ロシア、中国がGM食品に慎重な姿勢を強めてきている。ロシアは、WTO加盟条件である国内でのGM栽培の認可を延期し、議会には先ごろ、「GMはテロリズム」と規定する法案が上程されている。中国は、GM開発を急減速させ、100万トン以上の米国産トウモロコシの輸入も拒否。中国人民解放軍は、GM由来食品の排除を指示したとも報じられている。潮目が動き出したようにも見える。

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