首都圏と静岡県で店舗展開しているスーパーの東急ストアが、NON−GM飼料の低温殺菌牛乳と卵を、自社ブランド「Tokyu Store +」で販売している。
日本は年間約1400万トンのトウモロコシを、米国、ブラジル、アルゼンチンなどから輸入している。その4分の3が飼料用で、残りがコーンスターチなど加工用である。輸入トウモロコシの約7割、1千万トンが遺伝子組み換えと推定されている(農業生物資源研究所)。飼料用トウモロコシの多くがGMトウモロコシであり、NON−GM飼料の肉、卵、乳製品は、一部の生協が意識的に取り組んでいるものの、一般には購入が難しいのが現状だ。東急ストアのお客様相談室によれば、NON−GM飼料の商品は、今のところこの2つだけで、新たなNON−GM飼料商品の計画はないとしている。
・農水省・海外食料需給レポート, 2014-6・農業生物資源研究所
東急ストアの販売するNON−GM飼料の卵は、養鶏専業農協である神奈川中央養鶏農協(神奈川県愛川町、1957年設立)が生産したもので、生産者を彦坂さんに限定している。店頭では、1パック10個が220円前後(税別)で販売されている。神奈川中央養鶏によれば、同農協のNON−GM飼料の卵の多くがパル・システムなどの生協に出荷され、スーパー向けは東急ストアのみ。NON−GMトウモロコシの価格がネックになっているという。
もう一つのNON−GM飼料商品である低温殺菌牛乳は、長野県安曇野産の原乳を使ったもので、タカハシ乳業(群馬県前橋市)が製造し、店頭では1L230円(税別)で販売されている。タカハシ乳業は1950年以来、“低温殺菌ひと筋”に取り組み、現在は、非遺伝子組み換え飼料の徹底」生産体制を構築しているという。
タカハシ乳業のNON−GM飼料の低温殺菌牛乳は、スーパーの成城石井でも、同社のプライベート・ブランド「成城石井牛乳」として、1L約250円で販売されている。
NON−GM商品の購入選択肢が少ない中での、せっかくのこれらのNON−GM商品。消費者がそっぽを向いてしまっては、すぐに店の棚から消えることになる。多少は高くても購入するということは、「遺伝子組み換え食品はいらない!」という主張を、“買う”という行動で示すということでもあり、NON−GMを選択した農家を支えることでもある。これらのNON−GM飼料の卵や牛乳がロングセラー商品となることを期待したい。
近頃、NON−GMの鶏糞や油粕(ナタネ粕)を探している農家も多くなっているという。しかし、残念なことに、神奈川中央養鶏農協のNON−GM飼料の鶏糞は、処理費用がかさむため、GM飼料の鶏糞と混ぜられ、特に分別してはいないとのことだ。
【関連記事】
- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増