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最終更新日:2014年9月25日
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2014.09.25 No.630
■米国:50万人の反対を押し切って
 2,4−D耐性GM作物を承認

 米国農務省動植物検疫局(APHIS)は9月16日付けで、ダウ・アグロサイエンスの2種類の除草剤2,4−Dとグルホシネートに耐性のある遺伝子組み換えダイズ68416と44406と、2,4−D耐性GMトウモロコシ40278に対する栽培規制を撤廃する決定を発表した。このGM作物に使用するための2種類の除草剤、2,4−Dとグリホサート(ラウンドアップ)の混合農薬は、米国環境保護庁(EPA)の承認待ちとなっている。

 これら2,4−D耐性遺伝子組み換え作物は、モンサントの除草剤ラウンドアップの効果がなくなったスーパー雑草に対応するために開発された。2,4−Dは長時間、広範囲に漂い、周辺環境に大きな影響を与えるとされ、周辺環境への影響が懸念されている。新たに2,4−D耐性GM作物の栽培が始まった場合、2,4−Dの使用量が増加し、これまでの7倍に達するとAPHIS自ら見積っている。このため、一時、意図しない汚染を懸念した農民団体が承認反対の連合を作り運動を繰り広げていたが、2012年9月にダウ社と妥協している。

 除草剤2,4−Dがベトナム戦争で大量に使用された3種類の枯葉剤のうちオレンジ剤(エージェント・オレンジ)の成分であり、発がん性などが指摘され、“枯葉剤耐性作物”とも呼ばれている。

 これら3種類の除草剤2,4−D耐性のあるGM作物の承認には、約40万人の反対意見が提出された。この」大きな反対にAPHISは昨年5月、一般の承認手続きとは異なる、より厳しい環境影響評価の実施に追い込まれていた。今年1月に公表された環境影響評価書には、50万人近い農民を含む市民からの反対意見が寄せられたという。

 今回の決定に対して、一貫して反対してきた食品安全センターは17日、この決定は受け入れられないとして、商業栽培阻止のためにあらゆる法的措置を継続するとの声明を発表した。この中で、すでに2,4−Dに耐性のあるスーパー雑草が確認されていることを指摘し、その上で、今回の決定はグリホセート(ラウンドアップ)耐性ばかりか2,4−Dにも耐性を持つ、より扱いにくいスーパー雑草に直面することになり、現状を改善するものではなく「火に油を注ぐ」だけだとしている。

 ・Center for Food Safety, 2014-9-17

 この食品安全センターの声明を受けて、世界的な反農薬運動の ネットワークを構成する北米農薬行動ネットワーク(PAN NA)は 18日、承認阻止の法的措置についての支持を明らかにした。

 ・PAN NA, 140918

 ● 立ちはだかる中国の壁
  すんなりと行きそうにもない

 規制当局の承認が得られたとしても、順調に栽培が進むとは思われない状況もある。中国は昨年9月、シンジェンタの未承認GMトウモロコシであるMIR162の混入を理由として米国産トウモロコシの輸入を拒否し、累計は100万トン以上に達した。これによる“損害”は30億ドル以上といわれている。穀物メジャーのカーギルは9月12日、中国の輸入拒否により損害を受けたとして、シンジェンタに対して9千万ドルの損害賠償訴訟を起こしている。

 中国はエタノール醸造粕についても、未承認GMトウモロコシの混入を理由に輸入を拒否している。シンジェンタは、醸造粕輸出業者からも損害賠償訴訟を起こされている。

 ・Reuters, 2014-9-16

 カーギルを含む穀物業者の中には、混入の責任と混乱を嫌い、中国などで承認されていないGMトウモロコシ品種の受け入れ拒否の動きも出ている。一方、昨年7月に丸紅が子会社化した米国3位の穀物メジャー・ガビロンは、シンジェンタと組んで、積極的に受け入れることを明らかにしている。中国が受け入れなくとも日本でも韓国で売り先はある、ということなのだろう。現に、中国が最初に輸入を拒否した積荷約4万トンは、日本と韓国に振り向けられたと報じられた。

 今回、米国内で承認されたとはいえ、ダウが中国の承認を得ることは容易ではないと見られている。ダウ自身、中国の承認には2年かかると見ているとも報じられている。米国のトウモロコシ農家が栽培したとしても、混乱しそうである。

 ● 2,4−D耐性GM作物の承認を進める日本

 米国では、50万人の市民や農民の反対で承認手続きが2年遅れたとされている。その背景には、パブリックコメントの制度がある程度機能しているからに他ならない。一方、市民の意見を汲むべきこのパブリックコメント(意見募集)が、「通過儀礼」に堕している日本では、米国の遅れを横目に、いつでも輸入ができるかのように承認手続きが進められている。

 すでに昨年には、2,4−D耐性GMトウモロコシ40278が生物多様性、食品、肥料で「安全」として承認されている。食品安全委員会で審査されていたダイズ2品種のうち、68416は9月初めに「ヒトの健康を損なうおそれはない」とする評価が厚労省に通知されている。もう一つの44406は、8月にパブリックコメントが終わり、近く「安全」との評価がなさると思われる。食品安全委員会の評価の後、生物多様性と肥料についても、食品と同時に承認と思われる。

 こうした遺伝子組み換え作物の審査は非公開で行われ、申請企業のデータも、知的財産、企業秘密を理由に非公開である。そのデータに問題があったとしても、非公開では指摘すらできない。ここにも、制度的な問題がある。倫理的にも、企業の利益を人の健康に優先させるという倒錯がある。すべての情報を公開させる必要がある。

 この除草剤2,4−Dは、関連サイトや公式文書には「アリルオキシアルカノエート系除草剤」と表記されているので注意を要する。

  2,4−D耐性GM作物の審査状況
生物多様性 食 品  肥 料
トウモロコシ
DAS40278
2,4-D
2013/12 承認 2013/5 承認 承認
ダイズ
DAS68416
2,4-D+LL
審査終了 審査終了 審査終了
ダイズ
DAS44406
2,4-D+RR+LL
審査終了 PC終了 審査終了
  注)RR:除草剤グリホセート(ラウンドアップ)
    LL:除草剤グルホシネート
    PC:パブリックコメント(意見募集)

  ※安全性審査は分野別に次の3機関で審査される
生物多様性:生物多様性影響評価検討会
食品・飼料:食品安全委員会
肥料   :農業資材審議会飼料分科会

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