GM表示は僅差で敗退
オバマ民主党の大敗となった米国中間選挙の影で、遺伝子組み換えについて、注目すべきいくつかの住民投票が同時に実施された。2州で行われた遺伝子組み換え(GM)食品の義務的表示の住民投票は、オレゴン州(Measure 92)は僅差で、コロラド州(Prop 105)は大差で成立しなかった。モンサントを先頭とする、GM表示に反対する企業連合の圧倒的な資金力の壁を超えられなかった。
モンサントやデュポン、ダウ・アグロサイエンスなどのGM種子企業は、一連の反GMOの住民投票に対して、その反対運動に1千万ドル以上の多額の資金を提供している。食品企業がGM表示に反対するのは理解ができないわけはないが、GM種子企業によるテコ入れは、その異常さが際立っている。
一方、ハワイ州マウイ郡では、モンサントやダウ・アグロサイエンスなどのてこ入れを跳ね返して、GM作物の一時的栽培禁止を僅差で成立させた。カリフォルニア州フンボルト郡では、同州で5番目となるGM生物禁止条例が成立した。
企業連合の圧倒的な資金力に対抗して得られた条例制定は、米国の根強い市民運動の成果であるし、闘って獲得する民主主義の姿といえる。
11月4日の米国中間選挙と同時に行われた遺伝子組み換え食品の義務的表示を求めた住民投票は、オレゴン州では賛成49%、コロラド州では賛成35%で、いずれもGM表示義務化は成らなかった。 住民発議による2州の住民投票に、市民中心の表示賛成派は、2州で900万ドルを集めて運動を進めた。一方の遺伝子組み換え食品の義務的表示に反対するモンサントなどGM企業やクラフトなどの食品企業は、2つの州に合計3600万ドルの運動資金をつぎ込んでいた。中でもモンサントは、合計で1070万ドルを投入したという。圧倒的な資金力を背景とした企業連合が、2012年のカリフォルニア州、2013年のワシントン州に続きGM表示義務化をつぶしたことになる。
その一方では、米国初となる単独でのGM表示義務化の州法が、今年5月にバーモント州で成立している。差し止め訴訟が起こされているが、2016年からGM食品への表示が義務化となった。また、メイン州などでも表示義務化法が成立しているが、周辺州での同様な州法の制定が条件となっているため、いつから表示がなされるか定かではない。
・Reuters, 2014-11-5・Cornucopia Institute, 2014-11
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GMO禁止条例が僅差で成立
モンサントの遺伝子組み換え種子生産圃場のある米国ハワイ州マウイ郡では、4日の住民投票の結果、僅差の51%の賛成を得てGM作物栽培の一時的禁止条例が成立した。GM種子企業のモンサントやダウ・アグロサイエンスなどは約790万ドルの運動資金を集め反対したが、阻止できなかった。今後、反対派による差し止め訴訟が起こされるとみられている。
成立したGM作物栽培の一時的禁止条例は、GM栽培に関する安全影響評価が完了するまでの限定的なものであるものの、1日当たり最大5万ドルの罰金と、個人に対しては2千ドルの罰金と1年以下の懲役が科せられることになっている。
禁止条例の運動を繰り広げてきた SHAKA Movement のマーク・ シーアン氏は「企業に対する人々の勝利」「驚いた。うれしくて 興奮している」と述べたという。
ハワイでは、その気候が災いして、1100ヶ所余りの種子用のGM作物栽培と試験圃場があり、それに伴う農薬散布が大きな問題となっていた。マウイ島に従業員600人のGM種子生産圃場と試験圃場を持つモンサントは、510万ドルを投じて条例案に反対した。ほかに、ダウ・アグロサイエンスが180万ドル、バイテク情報協議会(Council for Biotechnology Information)が100万ドルを反対運動に提供していた。一方、個人の拠出による推進側の運動資金は、反対派の1%足らずの6万ドルに過ぎなかったという。
・Ballotpedia・Star Advertiser, 2014-11-4
・Center for Food Safety, 2014-11-5
GM生物栽培・飼育禁止の郡条例が成立
カリフォルニア州では、同州で5番目となるフンボルト郡のGM生物の栽培・飼育禁止条例が、約60%の賛成を得て成立した。GM作物のみならず、GM動物の飼育も対象として禁止するもので、栽培や飼育されていた場合、廃棄させる権限も規定されている。同州では、すでに、マリン郡など4つの郡で同様のGM禁止条例が成立していた。米国全体では、ほかにオレゴン州の2つの郡で、同様の栽培禁止条例が住民投票で成立している。
・Center for Food Safety, 2014-11-5・Ballotpedia
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