中国のGM懸念が大きく影響
ダウ・アグロサイエンスはこのほど、米国で承認されたばかりの2,4−D耐性コーンと大豆の遺伝子組み換え種子の販売を少数の農家に限定する方針を明らかにした、とロイターが報じた。ダウは、除草剤2,4−D耐性品種が国内、あるいは国際的な穀物市場での混入を防ぐためだとしている。ダウの販売制限の方針に、全米コーン生産者協会(NCGA:National Corn Growers Association)は、歓迎の声明を出したという。
この販売制限は、中国のシンジェンタの未承認品種の混入を理由とした輸入規制が大きく影響している。中国は昨年9月以降、100万トン以上の米国産トウモロコシの輸入を拒否している。穀物メジャーの一つであるカーギルは、9千万ドルの損害を被ったとしてシンジェンタを訴え、同じく穀物メジャーの一つADMも11月19日、シンジェンタを訴えた。コーン栽培農家による10億ドル損害賠償訴訟もおきている。一部の集荷業者には、中国で未承認のシンジェンタの新品種の集荷を拒否する動きも出てきている。一方、穀物流通業者がシンジェンタにそっぽを向く流れの中、昨年7月に丸紅が子会社化した米国3位の穀物メジャーであるガビロンは、シンジェンタと組んでいる。
中国で問題となったシンジェンタのGMコーンMIR162の米国内の栽培シェアは、わずか3%に過ぎない。にもかかわらず、国内外のサプライチェーンで混入が見つかっているという。この問題はすでに2007年、米国内のカントリーエレベーターにおける分別管理が不十分であり、将来的に輸出市場を失うことになる、と警告する調査結果を米国コーン生産者財団が公表していた。
ダウは、2,4−D耐性GM品種の種子の販売に当たって、隣接農家への汚染を防ぐために、栽培には隔離距離を設けるとともに、第三者による監査を行うという。
ダウはまた、この2,4−D耐性GM品種について、中国に承認申請を行っているという。しかし、ここ数年顕著になってきた中国のGM食品規制強化の姿勢がある限り、承認を得られるとは限らない。混入の恐れがある限り、訴訟リスクを抱えていては販売も限定的にならざるを得ないだろう。10億ドルの売上げを想定しているとされる2,4−D耐性GM品種は、本格的な栽培ができない可能性もありそうだ。そうなれば、すでに承認作業をほとんど終えている日本へ輸入される可能性も少なくなり、そのことは歓迎すべきことでもある。
中国は世界最大のダイズ輸入国で、年間6千6百万トンを輸入している。その意向で栽培にも大きな影響がでてくる。このダウのGM品種は、日本ではすでに承認されているか、ほとんどの手続きが終わっている。しかし、消費する側のノー!という声が、GM作物栽培を実質的に規制する可能性を中国の例が示している。
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