
WHO専門機関の国際がん研究機構(IARC)は3月20日、モンサントの除草剤ラウンドアップの主成分グリホサートについて、マラチオンとジアジノンと同時に「ヒトに対する発がん性がおそらくある」とするグループ2Aに位置づけると発表した。
この決定に関しIARCのメンバーは、家庭での使用よりも農業労働者への影響が最大の懸念だと語ったという。また、米国環境保護庁もこの決定を考慮するとしているという。ラウンドアップは、モンサントの上層材耐性遺伝子組み換え作物(ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ)に大量に使用されている。
このIARCの決定に対しモンサントは3月20日、グリホサート(ラウンドアップ)は「人間にとって安全」として、この決定に反対するという声明を発表した。モンサントの最高技術責任者フラレーは、「この評価に憤慨している」「世界の主要な規制当局の安全チェックと矛盾する。いいとこ取りの偏ったもの」と反発し、火消しに躍起となっている。
モンサントはまた、「モンサントは、規制当局でない団体によるバイアスのかかったジャンクサイエンスに同意しない。人の健康に対する責任ある評価には、透明性がある綿密な評価が不可欠」と題した声明を明らかにした。その中で、「IARCの分類は研究ではなく、新たなデータがない」「評価にとって重要な科学的データが評価から除外されている」などを理由として、この評価に同意できないと主張している。その上で、IARCには規制権限がなく、その判断はグリホサートの登録や使用に影響を与えるものではない、と強弁している。
・International Agency for Research on Cancer (IARC), 2015-3-20・LANCET, 2015-3-20
・Russia Today, 2015-3-21
・Monsanto, 2015-3-20
・Monsanto, 2015-3-20
・ハンギョレ(日本語版), 2015-3-22
・時事通信, 2015-3-24
モンサントから日本におけるラウンドアップなどの除草剤事業を2002年に譲渡された日産化学は3月24日、米国環境保護庁(EPA)が最もリスクの低いEに分類していることなどを理由に、「グリホサートに発がん性は無いと判断」しているとする声明を出した。
・日産化学, 2015-3-24問題は、グリホサートの発がん性を含む危険性については、グリホサート単体で評価されていることにもある。詳細が明らかにされていない界面活性剤などの添加物質を含んだラウンドアップとしての評価は行われていない。2012年のセラリーニ博士らの実験では、ラウンドアップだけグループにも問題が出ている。
モンサントが声明で述べているように「透明性がある綿密な評価」が本当に「不可欠」である。評価には第三者機関による、真に透明性のある試験が必要だ。モンサントがそのように主張するならば、まずモンサント自身がGM作物の健康影響試験を公開試験に移さなければならないだろう。良いとこ取りは許されない。
米国環境保護庁は1985年3月、グリホサートをEPA基準の「ヒトに発癌性がある可能性が高い」というCランクに位置づけた。しかし、モンサントのラウンドアップ耐性GM作物の開発時期にあたる1991年になり、「ヒトに対して発癌性が無い証拠がある」というEランクに変更されている。
90年代半ばからのラウンドアップ耐性GM作物栽培の増加に伴い、ラウンドアップの使用量は急増している。アメリカ地質調査所の推定によれば、2002年の5千万トンから上昇し、2012年には1億3千万トンに達している(ロイター)。こうしたラウンドアップの大量使用により、ラウンドアップに耐性を持つスーパー雑草が拡がっている。米国などでは、ラウンドアップに代わる2,4−Dやジカンバなど、別の除草剤耐性GM作物が承認されつつある。今回のIARCのランク付けが、他の除草剤耐性品種への移行を促す可能性もありそうだ。
一過性の減少かはまだ分からないが、ラウンドアップの売上げが落ち込んでいる。モンサントが1月7日に公開した第1四半期の決算情報によれば、売上高は、種子部門が前年同期比−3%の16億2千万ドルにとどまった一方、除草剤関連部門は前年同期比−15%の12億5千万ドルと大幅に減少している。なお、種子部門の3分の2を占めるトウモロコシが、南米地域での減少に伴い前年同期比−12%と大幅に減少し、オーストラリアでのコットン種子も大幅に減少したが、この減少分をダイズの売上げがカバーし、合計は−9%となっている。
・Monsanto, 2015-1-7日本のおけるラウンドアップの出荷量は、国立環境研究所の公開している農薬データベースの最新データによれば、2013年に約4900トンとなっている。
農薬外の除草剤扱いのラウンドアップは、ホームセンターなど実店舗だけでなく、アマゾンなどのネット通販でも容易に購入できるのが実情だ。農薬として使用できない非農薬除草剤として販売される、こうしたラウンドアップは農薬取締法の対象外とされ、何の法規制もなく、自由に製造・販売・使用できる状況にある。反農薬東京グループは、このような除草剤を農薬同様に取り締まるべきだと農水省や環境省に求めている。
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