
ネオニコ系農薬が広範に悪影響 証拠が増える

欧州科学アカデミー諮問委員会(EASAC)は4月8日、広範なネオニコチノイド農薬の使用が、ミツバチ以外の昆虫や生物に悪影響を及ぼしているとする報告書を公表した。
報告は、ミツバチの減少とそれによる授粉作物への悪影響ばかりが注目されたが、授粉以外にも、ハチ類や鳥類などの自然の害虫をコントロールしている生物が広く悪影響を受けていて、この数十年で個体数が大幅に減少しているとしている。その上で、農薬の再評価が必要だとしている。EUは2013年、クロチアニジンなど3種類のネオニコ系農薬の使用禁止を行い、2年以内に再評価を行うとしていた。
EASACは、ミツバチ以外にも、マルハナバチなどのハチ類、蝶や蛾、鳥類などの生態系の公益的機能(Ecosystem services)を担う生物に悪影響を示す証拠が積みあがっているとしている。そして、EUの持続可能な農薬使用指令(2009年)で示したように、ネオニコチノイドの予防的な使い方は、総合的病害虫管理(IPM)の基本原理と矛盾すると結論している。ネオニコチノイド農薬を使用することで、捕食生物を減少させ、自然が持っている害虫コントロールの仕組みを阻害しているとしている。また、ネオニコチノイドや他の農薬の広範囲の使用は、農地の生物多様性を回復させる潜在能力を制約しているとしている。
すべての農薬は対象外の種と環境に対して、食糧生産に対する望ましい影響と副次的被害の回避できない危険性の間でバランスをとらなければならず、ネオニコチノイドの場合、この2年間の科学的知識の増加は、バランスの取れた再評価の必要性を示しているとしている。
報告によれば、ミツバチなど花粉媒介生物による欧州での授粉による経済的効果は、推定146億ユーロ(約1兆9千億円)。ハチやテントウムシなどの捕食昆虫や鳥類による、自然の病害虫コントロールは、世界全体で推定1000億ドル(約12兆円)と、かなりの額となっている。
ネオニコ系農薬禁止の直接影響を受ける農薬メーカーのバイエル・クロップサイエンスやシンジェンタが会員である European Crop Protection Association(ECPA)のBocquet会長は、このEASACの報告書は「反ネオニコチノイドのキャンペーンに偏ったものだ」と語ったという(ロイター)。
ロイターによれば、欧州委員会はこの報告書を歓迎し、5月末までには新しい知見の検討を始めるという。
【リリース】【レポート本文】
・EASAC, 2015-4
・Reuters, 2015-4-8
・西尾道徳の環境保全型農業レポート 2010年2月1日
2年間で見直すとしたEUのネオニコ系農薬の一時使用禁止は、今回のEASACの報告書によるならば、規制緩和はよりいっそう難しくなったようだ。本格的な規制強化しかなさそうである。
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