
台湾・福利厚生部が4月16日に規制強化を発表した、日本産食品の輸入規制が5月15日から実施に移される。台湾の規制強化は、日本のいい加減で企業べったりな原産地表示の欠陥と、日本政府の怠慢が招いた自業自得の結果に他ならない。
3・11以降、台湾は、福島県など5県で生産された食品(酒類を除く)の輸入を禁止し、その他の都道府県産は全ロット検査もしくはサンプル検査を行うものとしてきた。今回の規制強化は、日本メーカーの怠慢によるところが大きい。日本の食品表示制度は、原産地は記号でもよく、必ずしも原産地を表示しなくともよい。それどころか、販売者が製造者と異なる場合、販売者だけで もよい。消費者には、どこで生産されたかがわからなくてもよい、欠陥だらけの制度となっている。そうした食品を、台湾に輸出してきた結果、300品目以上の「産地偽装」食品が摘発された。台湾の規制強化は、この「産地偽装」を受けたものにすぎない。
4月16日の発表で台湾当局は、当然のこととして、日本政府もしくは日本政府が権限を与えた組織が発行した産地証明書を条件とした。しかし、日本政府は、そうした体制を取ろうとすることもなく、高飛車に「WTO提訴」をちらつかせ、輸入規制そのものの撤回を迫るだけで、台湾当局の要求に応じることはなかった。
時事通信によれば、日本企業が参加する台北市日本工商会の幹部は「証明書の入手は不可能」「15日以降、日本から食品を輸出できない状況になる」と語ったという。この状況を5月14日付の産経新聞は「台湾、日本食品全て輸入停止」という見出しで報じた。条件を満たせないのは日本側であることには一切触れない、台湾を見下した記事となっている。
台湾当局が、福島県など5件からの食品の輸入禁止を継続していることに、菅官房長官は「科学的根拠に基づかない一方的な措置であり、極めて遺憾だ」と述べたという。台湾の人たちには、原産地表示の問題を「科学的」な問題とすり替えたたいうとしか映らないだろう。また、この「科学的」が福島など5県からの輸入禁止のことだとしても、この「科学的」の中身が日本の中でも信用されていないことも確かなことだ。そうでなければ、政府が必死になって「食べて応援」とキャンペーンを張ることはないのではないか。
・農水省, 2015-4-24 ・時事通信, 2015-5-14 ・産経新聞, 2015-5-14【関連記事】
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