農水省は6月23日、2014年度のミツバチ被害調査結果を、水田の農薬散布期を間近になりやっと公表した。発表によれば、報告があった被害は79件で、約3300箱でミツバチが死ぬ被害が出ているとしている。被害は、7月から9月の水稲開花期に、その約75%が集中し、ほとんどが農薬が原因と分析している。農水省は、こうした被害は蜂群崩壊症候群(CCD)はないと断定した。この調査は、養蜂家・養蜂業者から都道府県に報告があったものを集計しているため、報告漏れはカウントされていない。被害はさらに大きかった可能性がある。
発表によれば、死んだ蜂が採取されたのは37件。そのうち26件で、ネオニコ系などの農薬を検出している。ミツバチ死はこれらの農薬に暴露したことが原因と考えられる、と分析している。
水稲開花期とその前後での被害は52件あり、死んだ蜂を回収できた22件のうち15件から高い濃度の5種類の農薬が検出されたとしている。複数の農薬が検出された例もあり、延べ28剤が検出されている。このうち25剤が浸透性農薬で、ネオニコ系が延べ18剤、フィプロニルなどのフェニルピラゾール系が延べ7剤検出されたとしている。この農薬を検出した15件は、水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤の可能性が高いと判断している。
また、農薬散布の方法では、水稲開花期とその前後の被害52件のうち29件で、無人ヘリによる農薬の空中散布が行われていたことが明らかになった。
● 規制強化に踏み切らない農水省
今回の調査で判明しているように、原因として推定されている検出農薬はフィプロニルを含む浸透性農薬が9割を占めている。これらの浸透性農薬について、水稲への使用をやめることで、ミツバチばかりでなく、昆虫類の減少を防ぐことができることを示している。また、約6割が空中散布であったことは、空中散布による散布農薬の周辺部への拡散のを抑え、被害を低減できる可能性も示しているといえる。
欧米が規制強化に動く中、農水省はこれまでと変わらず、抜本的な規制には踏む出していない。農水省の対応策は、水田に巣箱を近づけないこととか、ミツバチの活動時間帯での散布を避けるなどといった、対策と呼ぶにはあまりも貧弱なものにとどまっている。農水省の「慎重」な姿勢が際立っている。
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