6月末に時間切れで失効の可能性
EU委員会・植物・動物・食物・飼料常任委員会は5月19日、グリホサートの認可更新の決定に失敗した。3月の決定延期に続く「失敗」。次回の会合の予定は決まっていない。EU委員会は、通常15年の有効期間を9年に短縮して、認可の更新を提案していた。
インデペンデント紙は19日、数週間のうちに欧州でグリホサートが禁止される方向と報じた。時間切れで、6月末にグリホサート(モンサントのラウンドアップの主成分)の認可期限が切れ、更新されない可能性がより強くなってきた。
インデペンデントによれば、19か国が賛成したものの、6か国が棄権、ドイツ、フランス、イタリア3か国の反対し、特定多数決での賛成が得られないとみて、採決しなかったとしている。直前まで、ドイツは棄権と見られていたが、明確に反対を表明した模様。
有効期限の6月末までに更新の決定ができなければグリホサートの認可は失効し、EU域内では6ヶ月の猶予期間をおいて使用が禁止される。ロイターはEU筋の話として、EU委員会は、この6ヶ月の猶予期間の停止を決定を望んでいるという。
欧州議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由同盟(Greens/EFA)は、決定延期はグリホサートの認可更新拒否に向けた動きであり、グリホサートの世界的な禁止に向かうべきとする声明を発表した。
グリホサートの認可更新に反対してきたグリーンピースEUは、「サプライズではない。独立した科学者、欧州議会議員、欧州の市民の懸念を無視してきたEU委員会が方針を変える時だ」とするコメントを発表した。
ロイターは、モンサントの広報が、EUの更新に関し法廷闘争も辞さないと語ったとも報じていて、先行きはまだはっきりしていない。しかし、EUのグリホサート取消であればモンサントには大きな痛手となることは確実で、バイエルによる買収がより現実味を帯びてくる。
欧州ではグリホサート反対の声は大きく、EU域内7千人の意識調査では、グリホサート禁止への賛成は、イタリアで75%、ドイツで70%、フランスで60%にのぼり、更新に賛成している英国でも56%が禁止に賛成しているという。グリホサート反対の署名は140万を超えている。こうした声が事態を動かしている。欧州議会は4月13日、使用条件を厳しくし、通常15年の有効期間を7年に短縮する決議を採択していた。
・Greens/EFA, 2016-5-19 ・Greenpeace, 2016-5-19 ・Reuters, 2016-5-19 ・Independent, 2016-5-19● 利益相反を指摘されたJMPR報告
EU委員会での投票を前にした5月17日、絶妙のタイミングでFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)が「グリホサートに発がん性はない」とする報告書を発表した。この見解は、昨年の国際がん研究機関(IARC)による「おそらく発がん性がある」という報告とは真逆のものであった。
この報告書にはすぐさま、利益相反の指摘がなされた。JMPRの共同代表の所属する国際生命科学研究機構(ILSI)が、2012年、モンサントから50万ドル、農薬業界などからなるCloplife Internationalから約53万ドルの資金支援を受けていたと報じられた。英紙ガーディアンは、EUの投票を前にしての「発がん性がない」というJMPRの見解表明は、関係業界からすれば数十億ドルの価値があると報じた。
・Gaurdian, 2016-5-17● フランス:EUとは関係なくグリホサート使用禁止へ
フランスの厚生大臣マリソール・トゥリエールは、EU委員会の今週の投票に関わりなくグリホサートの禁止を決めると明言。トゥリエール大臣は、グリホサートが発がん物質であるかどうかは関係なく、内分泌かく乱物質であることがその理由だとした。
フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は4月8日、モンサントのラウンドアップを含む、一部のグリホサート製剤を禁止する方針を決定したと報じられている。
・Agriland, 2016-5-18 ・Reuters, 2016-4-8【関連記事】
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