2013年以来3度目 韓国は輸入手続きを一時停止
米国農務省動植物検疫局(APHIS) は7月29日、米国ワシントン州の農場で、モンサントのラウンドアップ耐性遺伝子組み換え小麦MON71700が22本自生しているのを確認したと発表した。この品種は承認されていない。発表では、問題のGM小麦が流通していないとしている。モンサント広報担当によれば、この品種は、1998年から2000年まで太平洋北西部で限られた試験圃場でテストされたが商業化されなかったという。このGM小麦は、2013年に米国オレゴン州で自生が確認されたGM小麦MON71800とは異なる品種。米国で未承認GM小麦の自生が見つかったのは3度目となる。
ロイターによれば、今回未承認GM小麦が見つかった圃場は、2015年以来小麦を栽培していないという。また、ワシントン州農務省のスポークスマンは、「2、3週間前に確認された」と語ったという。
● 輸入手続きを一時停止した韓国
2013年に最初の自生が確認された直後、韓国は米国産小麦の輸入を一時的に停止したが、今回、ワシントン州からの小麦輸入を一時的に停止し、検疫を強化するとしている。韓国政府の食品医薬品安全処は7月29日、問題の未承認GM小麦が流通している可能性は低いとし、米国より情報が得られ次第、ワシントン州産の小麦は全量検査するしているという。韓国は今年前半、米国から約62万トンの小麦を輸入している。この半数以上がワシントン州産だとしている。
● 早急な対応が必要
2013年にオレゴン州でGM小麦の自生が見つかった際には、日本も一時的に一部の米国産小麦の輸入を停止した。今回、韓国はこのようにすばやい規制措置をとったが、日本政府の対応は明らかになっていない。
日本は昨年、522万トンの小麦を輸入しているが、その約半分が米国産で占められている。自生が確認されたワシントン州を含む西部諸州産の小麦のシェアもはっきりしていない。今の段階では、汚染の広がりがどの程度あるかは分からないが、流通在庫を含めた早急な対応が必要だ。
● またも迷宮入りか
韓国では7月26日、アルゼンチンから輸入した飼料用小麦から、オレゴン州で自生が見つかったGM小麦と同じ除草剤ラウンドアップ耐性GM小麦MON7180が見つかり、廃棄・積戻しが指示されている。
オレゴン州でのGM小麦自生に関してモンサントは、試験終了後に全てのサンプルを焼却したとしていた。この違法な自生の原因は、最終的に「分からない」まま迷宮入りしている。こうした試験栽培品種が、試験終了後10数年たって現れてくるということは、「厳重に行われている」という試験栽培圃場の隔離措置が、かなりいい加減なことを示唆している。一度「流出」すると、このような形で汚染を拡げることになる。今回も「迷宮入り」で処理される可能性が強そうだ。
・USDA・APHIS, 2016-7-29 ・Reuters, 2016-7-29 ・聯合ニュース, 2016-7-29輸入先 | 輸入量[トン] | シェア[%] |
---|---|---|
米国 | 2,734,405 | 52.3% |
カナダ | 1,575,348 | 30.1% |
オーストラリア | 901,661 | 17.3% |
その他 | 7,065 | 0.1% |
合 計 | 5,225,544 |
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