95%が害虫抵抗性(Bt)遺伝子組み換え品種だといわれるインドの綿作は昨シーズン、干ばつと害虫で大きな被害を受けた。その反動が豆類への転作と、非GM品種の作付増加となって現れている。綿種子のシェア90%のモンサントは販売の減少で赤字転落の見込みだという。
インド農業省によると、15年から16年にかけてのシーズンに897万ヘクタールで栽培された豆類は今年、1210万ヘクタールと35%増加し、豆類の栽培面積は、この5年の平均より11%以上多いという。トウモロコシや油糧種子の作付けも増えているという。
豆などの栽培が増える一方で綿の作付面積は大きく減少している。昨年の1057万ヘクタールから、今年は965万ヘクタールまで減少。Bt品種の作付面積は、昨年の970万ヘクタールから800万ヘクタールへと大きく減少した。一方、遺伝子組み換えでない従来品種は、昨年の88万ヘクタールから166万ヘクタールに倍増だという。
・Mint, 2016-8-6害虫抵抗性(Bt)遺伝子組み換え綿は、全草に殺虫性の成分を含み、綿の害虫ワタキバガの幼虫を殺す。米国では生物農薬扱いで登録されている。しかし、ターゲットとするワタキバガの幼虫が抵抗性を獲得したことで、その「効果」がなくなり、大きな被害が出ているという。
インド南部のカルタナカ州の綿作は、95%がBt品種だという。このBt綿に抵抗性を持ったワタキバガの幼虫と、天候不順で大発生したコナジラミにより大きな被害を受けた。この状況にカルタナカ州の農民運動組織KRRSは5月、農民に対して、来シーズンのBt綿の作付けをやめ、穀類と豆類に転換するように勧告した。カルタナカ州に隣接するアーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナ州の政府も農民に対して、来シーズンは綿を栽培しないように勧告したという。
・The Hindu, 2016-5-13農薬や化学肥料の使用量も増えている。2006年にヘクタール当り0.5Kgだった農薬使用量は、2015年は1.2Kgと2倍以上に増加。化学肥料の使用量も2倍に増加しているという。「効果」が失せたBt綿の種子は、ロイヤリティが加算され高価格な上、毎年購入しなくてはならない。農民にとっては踏んだり蹴ったりの状況にある。その点からも、自家採種した種子を翌年も使える従来品種への切り替えが起きているのだろう。
ロイターによれば、昨年4100万箱のBt綿の種子を販売し、シェア90%といわれたモンサントの売上げは低下し、政府によるロイヤリティの制限により7500万ドルの損失が見込まれているという。
・Reuters, 2016-8-2除草剤に抵抗性を持ったスーパー雑草でと同じように、害虫も抵抗性を獲得し、必然的に農薬の使用量は増加する。種子企業は「次世代」品種を登場させ、麻薬のように、毎年買わざるを得ない状況を作り出してきた。インドの豆類への転換の増加や、非GM品種の栽培の増加は、種子企業による「支配」にほころびが出てきたということだ。
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