英国の研究チームは8月16日、1994年に始まったネオニコ系農薬の使用が、野生のミツバチ類の長期的な個体数減少と関連しているとする研究結果をネイチャーに発表した。最大30%の減少をもたらしたとしている。ネオニコ系農薬の使用と野生のミツバチの減少を関連付けた最初の研究結果だとしている。
英国の政府系研究機関である自然環境研究会議(NERC:Natural Environment Research Council)・生態学・水理学研究センター(CEH:Centre for Ecology and Hydrology)は、1994年から2011年にかけての18年間について、英国・イングランドにおけるネオニコ系農薬の使用と62種類の野生ミツバチ類の個体数の変化を調べた。その結果、ネオニコ系農薬の使用と、野生のミツバチ種の大規模で長期的な減少との間に関連があることを示唆しているという。
2002年からネオニコ系農薬によるナタネの種子処理が始まり、現在ではナタネ種子の85%に及んでいるという。この結果、ナタネから花粉や花蜜を得ている種が影響を受け、最も影響を受ける5種では少なくとも20%、最大30%減少したと見積もっている。いろいろな種類に訪花している種の影響との違いは約3倍あったという。
減少要因がネオニコ系農薬だけにあるわけではなく、気候変動などの要因も考えられるとしているが、ネオニコ系農薬(殺虫剤)で種子処理されたナタネから花粉と花蜜を得ている種は、10%以上の影響を受けているとしている。
EUは2013年12月、3種類のネオニコ系農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)を一時的に使用禁止とした。欧州食品安全機関(EFSA)は、2017年1月までに、一時禁止のネオニコ系農薬の検討を行っているが、このCEHの研究結果が、EFSAの検討に影響を与える可能性がある。
EUの一時禁止を受けて英国でも使用禁止となった。英国政府は2015年、緊急措置としてイングランドの一部でナタネへの使用を認めてる。
・Nature Communication, 2016-8-16 ・Centre for Ecology and Hydrology, 2016-8-16 ・Nature, 2016-8-16 ・Guardian, 2016-8-16英国の研究では、ナタネの種子処理に使われているネオニコ系農薬が大きな要因だとされた。日本では、イネの育苗からネオニコ系農薬が使用され、斑点米カメムシの防除としても散布している。農水省は、諸外国と使用形態に違いがあり、単純に比較できないという立場を崩していない。その一方、斑点米カメムシの防除に使用されるネオニコ系農薬がミツバチに被害を与えていることを認めている。しかし、残念ながら、禁止や使用規制などの有効な対策を採るつもりはないようにみえる。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増