モンサントは7月6日、次世代の害虫抵抗性・除草剤耐性の遺伝子組み換え綿(Bollgard II Roundup Ready Flex)の商業栽培にかかる申請を取り下げたことが分かった、とロイターが報じた。インド政府は、遺伝子組み換え綿の種子のロイヤリティに上限を設けるなどの種子規制を導入しようとしている。モンサントの申請取下げは、露骨な「脅し」にもみえる。
インド政府は、モンサントなど外国企業の持つ遺伝子組み換えなどの技術をインド企業が共有することを強制する方針を示していた。モンサントは、この方針に対抗して申請を取下げた模様。モンサントは取材に対し「規制当局の不確実さと進行中の協議ため」だとブルームバーグが報じている。
この次世代GM綿は、モンサントが資本参加しているマヒコ社が申請していた。マヒコ社は、これまでに提出したデータの返却を求め、インドの監査機関である遺伝子工学評価委員会(GEAC)は返却したという。
インドのモディ政権の支持団体の一つである民族義勇団(RSS)は、モンサントの「撤退」を「よい兆し」として評価し、農民がこれまでに負った損害を保障すべきだとしているという。
・Reuters, 2016-8-24 ・Bloomberg, 2016-8-24インド政府は、遺伝子組み換え種子のロイヤリティの切り下げと種子価格の規制、インド企業との技術の共有など種子規制を強めようとしている。モンサント、バイエル、デュポン、ダウ、シンジェンタのGM種子大手5社は8月26日、共同してインド政府に対抗することを明らかにした。
・Reuters, 2016-8-26インドは2002年、害虫抵抗性(Bt)遺伝子組み換え綿の商業栽培を開始した。その栽培面積は約1000万ヘクタール規模にまで増え、モンサントのGM品種に大きく依存する状況となっている。一方で、綿の害虫のワタキバガの幼虫が抵抗性を持ち、害虫抵抗性の遺伝子組み換え綿の「効果」にかげりがでてきている。昨シーズンは大きな被害が出て、農民の不満が高まっていた。インド政府によるロイヤリティの上限規制など新たな種子規制は、農民の不満を抑え、主導権を取り戻そうとする政治的な動きといえるが、明らかにモンサントの権益を侵すことになる。新品種の申請取下げや、GM種子大手5社が共同して対応しようとしていることは、インド政府の種子規制への露骨な「脅し」といえるだろう。
モンサントへの全面的な依存状況を人質にした「撤退」の「脅し」は、アルゼンチンやブルキナファソでも起きている。背景には、毎年買わなければならない種子や、高額なロイヤリティへの農民の不満の高まりがある。農民の不満に押された当該国政府の対応に、露骨な対応をとらざるを得ないまでに、モンサントのビジネスモデルが綻びを見せてきている、といえるのかもしれない。
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