米国ミネソタ州デイトン知事は、ネオニコチノイド農薬の使用に際し、農民が差し迫った収穫減少の脅威を確認しなければならないとする行政命令を出した、と8月26日のロイターが報じた。詳細は未定だとしているが、米国におけるこれまでで最も幅広い規制だという。
ロイターによれば、ミネソタ州当局は、環境保護庁(EPA)の種子処理した種子の使用と販売の規制権限を州に与えることを望んでいるという。
ミネソタ州の行政命令に、農薬行動ネットワーク・北米のレックス・ホーラン氏は「ミネソタは、ポリネーター保護で米国の先頭に立った」と述べた。
・Reuters, 2016-8-26 ・Guardian, 2016-8-27米国ではネオニコ系農薬の多くが種子処理の形で使用されている。このため、種まき時期に、ネオニコ処理の種子を使わないと大幅な減収になることを「確認」しなくてはならないことになる。使用のハードルはかなり高いと思われる。
また、州当局が、ネオニコ処理種子の使用と販売の規制権限を求めていることは、規制の実効性を確実にしようという意図かもしれない。
米国環境保護庁の研究によれば、ネオニコ系農薬で処理した種子を使っても収益アップしないとの結果がでている。ミツバチなどの受粉媒介生物の減少の大きな原因がネオニコ系農薬にあるとされており、賢明な判断といえる。
カナダ・オンタリオ州では、2015年からミツバチ保護を目的に、ネオニコ系農薬で種子処理されたコーンとダイズの播種面積を2017年までに80%減少させる規制を実施している。
● 米国のダイズ 94%が遺伝子組み換え
米国農務省の統計によれば、2016年のダイズ栽培面積は、全米で約8400万エーカー。そのうちミネソタ州は780万エーカー(9.3%)と、3番目の主要な大豆生産州でもあり、知事の行政命令の内容次第では、影響は大きい。ミネソタ州で栽培されるダイズの96%は遺伝子組み換え品種である。
・USDA, 2016-6-30 ・USDA, 2016-7-14【関連記事】
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