閉鎖を求め反対運動
地域の拠点として開発が進む韓国全羅北道完州郡では、韓国農村振興庁の遺伝子組み換え(GM)作物の屋外試験栽培場が、地域住民に知らされないまま設置され問題となっている。すでにGMリンゴやGMイネの試験栽培が始まっている。この一帯は親環境農業(有機農業、環境保全型農業)地域で、農民は設置に反対している。ハンギョレが報じている。
昨年11月、住民が偶然に「遺伝子組み換えリンゴ試験栽培」の看板を見つけ、農村振興庁による遺伝子組み換え作物の隔離圃場が置かれたのが分かった。住民が抗議すると、住民の目に触れる看板を撤去し、隔離圃場の片隅だけに残したという。住民によれば、雨が降れば、試験水田から水があふれて村の水田に流れ込み、隔離フェンスも5ミリ目と大きく意味がないという。隔離圃場といっても、花粉も風で容易に拡散できる。しかし、農村振興庁は「安全」というだけだとしている。
全北道民行動は8月8日、農村振興庁傘下の国立農業科学院農業遺伝資源センターの前で記者会見を開き、センターが、9品目43品種の遺伝子組み換え作物の試験栽培を行っているが、隔離が不十分で管理規定に違反していると指摘した。
全北道民行動は、遺伝子組み換え作物試験栽培の中断と試験栽培場の閉鎖、遺伝子組み換え作物研究・開発の実態の公開、実態把握のための民官共同の調査を求めているという。また、農村振興庁に情報公開を請求したが、公開に消極的で、不十分な内容だという。一方、農村振興庁は、2020年までに20品目200品種の遺伝子組み換え作物の試験栽培を計画しているという。
農村振興庁は9月5日、現地説明会を開き、「商業栽培は、国民の同意なしには行わないというのが私たちの立場」と述べたという。隔離圃場では現在、遺伝子組み換えリンゴのほかに、遺伝子組み換えのイネや豆などが約1ヘクタールで試験栽培されているという。
この隔離圃場に反対している「農村振興庁遺伝子組み換え作物開発反対・全羅北道道民行動」は9月6日、同庁の前で、遺伝子組み換え作物試験栽培地の閉鎖と遺伝子組み換え作物開発事業団の解体を求める集会を開くという。
・ハンギョレ, 2016-8-16 ・ハンギョレ, 2016-9-6農村振興庁の傘下にある国立農業科学院のHPによれば、同院は、イネの遺伝子組み換え品種の開発を重点的に行っているようだ。すでに遺伝子組み換えのゴールデンライスと同様なカロテン強化イネの開発を終え、高い抗酸化作用を持つアスタキサンチン産生イネの開発を行っているという。また、乾燥や塩分などに耐性を持つストレス耐性のイネや、黒葉枯れ病耐性イネなどの開発も行っているとしている。
・国立農業科学院韓国でもイネをはじめ遺伝子組み換え作物の商業栽培は行われていない。農村振興庁が「国民の同意なしには行わない」といわざるを得ないほど、遺伝子組み換え作物の安全性に対する消費者の懸念は大きい。多額の費用を投じて開発した遺伝子組み換え作物は、ほとんど商業栽培されることなく消え去っている。
日本でも、地域の農家などの反対にもかかわらず、遺伝子組み換えイネの屋外試験栽培を強行している。新潟県上越市の農研機構・北陸研究センターでは2005年、遺伝子組み換えの複合病害抵抗性イネの屋外試験栽培が行われた。中止を求める仮処分裁判では、韓国と同様に、北陸研究センターの情報隠しの姿勢が強く指摘された。結局、この複合耐病性イネは、成功の発表もなく、ひっそりと2007年に終わっている。
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