米国のミネソタ大学などの研究グループはこのほど、ミツバチの女王蜂の産卵数は、コロニーが小さいほどネオニコ系農薬の影響を受けやすいという研究結果を発表した。この結果は、コロニーがまだ小さい春先の曝露を少なくすることが、ミツバチへの影響が小さくなることを示しているとしている。こうした研究は初めてだという。
研究グループは、3つ大きさの違う群れ(1500匹、3千匹、7千匹)に、最大100ppbの5種類の濃度のイミダクロプリドをエサに混ぜて与え、女王ハチの産卵数を比較した。その結果、群れが小さいほど、イミダクロプリドの濃度高いほど産卵数が少なかったとしている。
・Nature, 2016-8-26英国の研究グループは昨年8月、英国におけるナタネ栽培で使用するイミダクロプリドの使用量とミツバチのコロニーの消失が関連する、という研究結果を発表している。
今年に入っても、この研究のようなネオニコ系農薬のミツバチ類への悪影響を示す研究結果が明らかになっている。ベルン大学などの研究チームは7月、ネオニコ系農薬のチアメトキサムとクロチアニジンが雄ミツバチの精子数を約4割減らす影響があると発表した。8月には、英国の自然環境研究会議・生態学・水理学研究センターなどが、ネオニコ系農薬の使用が野生ミツバチの個体数の減少と関連していると発表した。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)は今年2月、ハチなどの受粉媒介生物による経済的価値は、世界的には最大58兆円に達するという試算も公表し、部分的なものも含め食料作物の75%が受粉に依存しているという。ハチなどの受粉媒介生物が少なくなることは、食料生産の減少につながる。
このネオニコ系農薬と受粉媒介生物の減少は、地球温暖化による食料生産への影響と並ぶ大きな問題だといえる。日本では残念なことに、ネオニコ系農薬の残留規制の緩和が続いている。その一方で農水省は、輸出相手国の厳しい規制に適合するように、農薬使用を限定して栽培するように指導しているのが実情だ。
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