GM小麦から撤退か?
モンサントは9月12日、資本提携していたオーストラリアの穀物種子大手インターグレインの全保有株式(26%)を売却したと発表した。モンサントは2010年、干ばつ耐性・耐病性の遺伝子組み換え小麦の共同開発を目的として、インターグレインへ20%の資本参加していた。モンサントの提携解消の決断は、「進行中のビジネス再編の一環」だとしている。モンサントは9月14日、バイエルの買収提案に合意した。
インターグレインは、オーストラリアでの小麦種子のシェアが40%(2010年当時)の大手種苗会社で、実質的に西オーストラリア州農業局傘下の企業。モンサントは2013年に資本比率を26%に上げていた。モンサントの提携解消で出資比率は、西オーストラリア州政府農業局が62%、穀物研究開発社(GRDC:Grains Research Development Corporation)が38%となったとしている。
インターグレインは声明で、モンサントの提携解消は「友好的」に行われたというものの、モンサントの資本参加により分子マーカー技術が使えなくなるという。
・Monsanto, 2016-9-12 ・InterGrain● モンサントはGM小麦から撤退か?
モンサントは2004年、日本を含む消費者や生産者の反対に直面し、ラウンドアップ耐性小麦の商業栽培を断念しているが、2014年1月には、除草剤耐性遺伝子組み換え小麦の実用化が近い、とロイターが報じていた。今回、干ばつ耐性遺伝子組み換え小麦の開発を目的にしたインターグレインへの資本参加を解消したことで、モンサントは遺伝子組み換え小麦から撤退を決めたのではないかとの見方が出ている。モンサントが、本当に遺伝子組み換え小麦開発から撤退するのであれば、そのこと自体は歓迎できるが、まだはっきりしていない。
・GM Watch, 2016-9-14● 商業栽培への動きは止まっていない
米国、カナダ、オーストラリアが、日本の主要な小麦輸入先だ。この3カ国の小麦生産者団体は2009年5月、遺伝子組み換え小麦の商業栽培を求める共同声明を発表した。これに対し、3カ国の農業団体や消費者団体、環境団体など15団体が商業化反対の共同声明を公表した。日本からは生協や有機農業関係団体など80団体が賛同署名していた。
小麦は他の作物と異なり、欧米の主要な主食作物であり、消費者の安全性への懸念と商業化反対は根強い。遺伝子組み換え小麦商業栽培断念したという報道はまだない。モンサントが撤退したとしても、商業栽培への動きは止まっていないとみるべきだろう。
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