ラットの長期試験で判明
ロンドン大学などの研究チームは1月9日、グリホサートを主成分とするラウンドアップを長期にわたり超低濃度で与えたラットに非アルコール性脂肪肝を引き起こすとする研究結果を、サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に発表した。研究によれば、4ng/Kg体重に相当する50ng/Lのラウンドアップを含む水を約2年間にわたって与えた結果、脂肪肝を生じ、対照群と比べ有意だったという。また一つ、ラウンドアップ(グリホサート)の問題が明らかになった。
・Scientific Reports, 2017-1-9グリホサートについては、2015年3月、WHO(世界保健機構)の国際がん研究機関(IARC)が、その発がん性について、「おそらく発がん性がある」とする評価を発表した。この評価については、EU食品安全機関(EFSA)や米国環境保護庁(EPA)などの各国の規制機関から、否定する見解が発表され大きな問題となっていた。国際がん研究機関はこれまで、その評価を変更していない。
◆ 日本の管理目標値は「4万倍」
日本の水道水水質基準には農薬の基準値はなく、管理目標値が設定されている。グリホサートに設定されている管理目標値は2mg/Lであり、これは、脂肪肝を確認したラットでの試験の4万倍に相当する高い濃度ということになる。
このグリホサートの水質管理目標値2mg/Lは、グリホサートのADI(一日摂取許容量)を元に、日本人男女の平均体重53.3Kgの人が、1日当たり2リットルの水を飲み、その水からADIの10%のグリホサートを摂取するとして算出されている。
次の表に日本と、米国、EUの水質基準(管理目標値)を示す。
ADI [mg/Kg体重/日] | 水質管理基準・目標 [mg/L] | |
---|---|---|
日本 | 0.75 | 2 |
EU | 0.3 | 0.0001 |
米国 | 1.75 | 0.7 |
◆ 水道水のグリホサート 実態は不明
日本の水道水中のグリホサートの残留値がどのようなものか気になるところだが、厚労省などの公表データには見あたらず、実態は不明だ。
水道水など飲料中のグリホサートの残留値のデータに関しては、昨年、ドイツで、市販のビール14銘柄から最大約30μg(50ng/Lの600倍)を検出したというレポートが公表されている。
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