英国ロザムステッド研究所は2月1日、光合成機能を強化して収量を40%増やすという遺伝子組み換え小麦の屋外試験栽培の承認を得たと発表した。温室での試験結果を確認するという。この遺伝子組み換え小麦の開発は、将来の世界的な人口増加を見据えたものだとしている。しかし、こうした遺伝子組み換え技術を使うまでもなく、これまでの品種改良で可能だと指摘されている。ロザムステッド研究所はこれまでに、近隣の農家の反対を押し切り、アブラムシ耐性遺伝子組み換え小麦の屋外試験栽培を行っている。
この遺伝子組み換え小麦は、同じイネ科のミナトカモジグサの遺伝子を組み込んで、光合成機能を強化したという。組み込み遺伝子には、選抜用の抗生物質カナマイシン耐性遺伝子や除草剤グルホシネート耐性遺伝子を含んでいるという。こうした耐性遺伝子が自然環境中に出ることにより、細菌などが抗生物質に耐性を獲得することが懸念されている。
ロザムステッド研究所は昨年11月、試験栽培の申請を行った。これに対して、遺伝子汚染(交雑、試験圃場からの流出)などを懸念した、英国などの欧州の遺伝子組み換え反対団体や環境団体など30団体は連名で承認反対の要請書を英国政府に提出していた。要請書では、ロザムステッド研究所の交雑防止措置が不十分だと指摘している。
・Rothamsted Research, 2017-2-1 ・BBC, 2017-2-1 ・GM Freeze ほか, 2016-12-14◆ 各地で起きている試験栽培品種の流出
承認反対の要請書が指摘しているように、各地で試験栽培の遺伝子組み換え小麦やイネが「流出」し問題となっている。
米国ではこれまでに、モンサントの試験栽培の除草剤(ラウンドアップ)耐性遺伝子組み換え小麦の流出が起きている。昨年7月にも見つかり、日本や韓国は一時的に小麦輸入を禁止した。問題は、遺伝子組み換え小麦の試験栽培地ではないところで発見されていること。その「流出」ルートは解明されていない。
バイエルの試験栽培の除草剤耐性遺伝子組み換えイネも「流出」している。輸出ができなくなったことで、バイエルは巨額の賠償金を支払った。
開発した研究所から流出したと見られている中国の害虫抵抗性遺伝子組み換えイネの汚染は根絶できていない。今でも欧州などで、中国産のビーフンなどの米加工製品から見つかっている。一度流出すると、その回復は難しい。
◆ 日本では光合成機能強化GMイネ
日本でも、英国のような遺伝子組み換え技術を使った光合成機能強化の作物開発が行われている。農研機構では、光合成機能強化を目的とした遺伝子組み換えイネの開発が行われている。2014年度から16年度にかけて、つくば市ナにある農研機構の隔離圃場で屋外試験栽培を実施している。
・農研機構, 2016-4-8 ・農研機構, 2015-5【関連記事】
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