市民は強い反GM意識 横行する違法栽培
中国の穀物収穫量の10%を生産する黒龍江省は今年5月以降、米やトウモロコシ、大豆などの遺伝子組み換え作物の栽培を全面的に禁止する、罰則付きの食品安全条例が施行される。これにより同省全域(約1180万ヘクタール)がGMOフリーゾーンとなる。黒龍江省政府は昨年、省内での遺伝子組み換え作物栽培禁止の方針を打ち出していた。背景には、黒龍江省市民の大多数が、同省内での遺伝子組み換え作物の栽培に反対という状況がある。
食品安全条例はまた、遺伝子組み換え成分を含む作物・食品の違法な販売を禁止し、レストランなどでの遺伝子組み換え食品使用の表示が義務となっている。
黒龍江省人民代表大会常務委員会は16年10月、黒龍江省の13市で遺伝子組み換え作物の栽培に関するアンケート調査を行い、91.5%は黒龍江省での遺伝子組み換え作物栽培に反対だったという。
・China News, 2016-12-17◆ 遺伝子組み換えには強い反対
中国では、強い遺伝子組み換え作物・食品への反対がある。中国科学技術発展戦略研究院などは昨年4月、北京や広州など全国12地区で意識調査を行ったが、遺伝子組み換え技術への懸念、警戒感が明らかなったいう。73%が遺伝子組み換え食品を食べたくないとして、食べるとした19%を大きく上回った。遺伝子組み換えイネの栽培には63%が反対し、賛成とする27%を、これも大きく上回ったという。また、51%が遺伝子組み換え食品に健康リスクがあると考えているという結果だったという。
・法制網, 2016-12-21こうした一般市民の意識とは逆に、中国政府は、これまでの慎重姿勢から推進に舵を切っている。昨年1月、年初の中共中央1号文書で、遺伝子組み換え作物の商業栽培に積極的に推進する姿勢を明らかにしていた。また、中国政府農業部幹部は昨年4月、2016年からの第13次5カ年計画において、害虫抵抗性遺伝子組み換えトウモロコシの商業栽培を推進すると明言したと報じられている。
全面禁止を打ち出した黒龍江省の条例に対して中央政府の反応は明らかではない。今後、黒龍江省のような反中央政府の方針が「衝突」するのではないかという見方も出ている。
・中外対話, 2017-2-9◆ 違法な遺伝子組み換え作物栽培の横行
中国では、パパイヤなどを除き、遺伝子組み換え作物の商業栽培は認められていない。しかし一昨年、黒龍江省で栽培される大豆の10%が、違法な遺伝子組み換え大豆であると報じられている。他にも、海南省、陝西省などでも違法な遺伝子組み換えトウモロコシが栽培が摘発されている。昨年1月、遼寧省で違法な遺伝子組み換えトウモロコシが広範に栽培されていると、グリーンピースが調査結果を公表している。中国では、法規制や政府方針と裏腹に、違法な遺伝子組み換え作物栽培が横行している。
・yibada.com, 2015-9-8 ・Greenpeace East Asia, 2016-1-6
(参考) 中国の食糧生産(2016年)
全国生産量 61623.9万トン
黒龍江省 6058.6万トン
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・品目別生産量
とうもろこし 21955.4万トン
米 20693.4万トン
小麦 12885.0万トン
豆類 1729.4万トン
イモ類 3377.9万トン
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