厚労省は、新しいネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの承認に向けて、近く意見公募(パブリックコメント)を始める予定だという。スルホキサフロルの承認作業は昨年3月、米国での登録取消しを受けて保留されていた。
米国では、野生のミツバチなどへの影響を調べないまま農薬登録したことが連邦法に違反するとして、連邦地裁が登録無効の判決を下した。この判決で15年11月、一旦登録が取り消されたが、16年10月、条件を厳しくして再登録された。この米国の再登録を受けて、厚労省は承認作業を再開した。
ネオニコ系農薬のスルホキサフロルは、ダウ・アグロケミカルが開発した、カメムシなどの昆虫の神経に作用して駆除するという農薬である。日本では、商品名イソクラストで日産化学が生産。スルホキサフロルは浸透移行性で、野菜などが全体に吸収するため、洗っても落ちることはない。
◆ 野生の受粉媒介昆虫を無視した日本
スルホキサフロルの再承認にあたり米国環境保護庁は、ハチが好むベリー類やトマトのようなナス科の果菜類、リンゴやナシなどの果実に対しては開花後の散布に限定して使用を認めた。開花期が長いキュウリなどのウリ科の果菜類やかんきつ類への使用は禁止した。また、イチゴや大豆への使用も禁止とされた。
2015年に農薬登録したEUでは、キュウリやズッキーニなどのウリ科や、トマト、ピーマンなどのナス科の果菜類への使用を1回に限って認めているが、成長に応じた規制がある。
一方、農水省の農薬登録基準では、米国のような野生の受粉媒介昆虫への考慮は一切払われていない。米国の禁止したかんきつ類やキュウリに対しても収穫前日までの散布を認めている。米国が開花後に限定しているリンゴやなし、トマト、ピーマンなどには、開花後に限定することなく収穫前日までの散布を認めている。また、使用回数も、2回ないし3回の使用を認めている。
農水省系の農研機構は昨年3月、ハチなどの受粉媒介動物による経済効果は4700億円に達し、その7割が野生の受粉媒介動物(送粉者)によると推定した報告書を公表した。それにもかかわらず、農水省が薬剤のパッケージに注意書きをすることで事足りるとしていることは驚きだ。農水省は、野生の昆虫が注意書きを読めると考えているのだろう。
◆ 国際的には高めの残留基準
厚労省の諮問を受けて薬事・食品衛生審議会の示した残留基準値(案)では、国際基準や米国基準より高いものもある。限定的に残留基準を抑えているかに見えるEUとは大きく違っている。中でも白菜やホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、コマツナなど、よく食べられている葉物野菜の基準値が6ppmと高く設定されているのが目に付く。
農水省はもっと野菜を食べようと運動していて、1日に350グラム以上が目標だという。冬に鍋物などでよく食べられる白菜では、体重50キログラムの人が、基準限度6ppmのものを200グラム食べると、安全だという一日摂取許容量の約6割に達してしまうことになる。
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