米国の環境保護団体の環境ワーキンググループ(EWG)は、米国農務省などによる調査結果を分析し、48種類の慣行栽培の野菜・果物の70%で残留農薬を検出したと発表した。トップはイチゴで、最大20種類が残留していたという。
元となったデータは米国農務省と食品医薬品局(FDA)による約3万6千点の残留農薬の調査結果で、178種類の農薬もしくはその代謝物が残留していたという。
イチゴ以外にも、ホウレンソウ、桃、ネクタリン、サクランボとリンゴのほとんど全てのサンプルから、少なくとも1種類の残留農薬を検出されているという。ホウレンソウの4分の3からは、欧州で禁止の神経毒性の農薬が検出されているという。
一方、残留農薬が比較的少なかったのは、スイートコーン、アボカド、パイナップル、キャベツ、タマネギ、パパイア、アスパラガス、マンゴー、ナス、ハネデューメロン、キーウィ、カリフラワー、グレープフルーツだとしている。
・Environmental Working Group, 2017-3-8輸入生鮮イチゴはほとんどが米国産
農水省によれば2015年、日本のイチゴの生産量は約16万トン。一方、財務省の貿易統計によれば2016年、EWGが残留農薬の筆頭に上げたイチゴでは、生鮮品の輸入は約3千トン。その9割以上が米国産で占められている。冷凍イチゴの輸入は2万5千トン。その6割が中国産で、米国産は約3千トン(14%)となっている。貿易統計からは輸入品の用途は分からないが、ケーキのトッピングやジャムなどの加工品ではないだろうか。
輸入品の検査では残留農薬の検査も行われるが、厚労省が公表している違反事例を見る限り、イチゴで残留基準値を超えて廃棄を指示された例は見当たらない(2016年度)。日本のイチゴの残留基準値が高めに設定されているからかもしれない。
60回を越えるケースもある日本のイチゴ
日本では、慣行栽培のイチゴは50回前後の農薬が散布されている。台湾の輸入時検査の結果でも、ミカンと並んでイチゴの残留農薬検出が目立っている。イチゴの農薬散布がどの程度かは、特別栽培の慣行基準が一つの指標となる。農薬や化学肥料を半分以下に減らした特別栽培農産物には、都道府県ごとに農薬散布の標準的な回数が設定されている。
イチゴに対する慣行栽培の標準的な農薬散布回数は、長崎県の65回をトップにして、福岡県、熊本県、栃木県など17府県が50回以上となっている。埼玉県、愛知県など7県は設定されていない。この7県を除いた平均の標準的な散布回数は約45回となる。
市販のイチゴは、特に断りのない限り、このような回数の農薬が散布されていると考えられる。有機JASを取得したイチゴはほとんどないとも聞く。ハウスで栽培し、12月に収穫するという、旬を無視したやり方では農薬も多くならざるを得ないのだろう。一方、露地で農薬を使わないイチゴも可能だ。神奈川県大和市のなないろ畑農場では、旬の6月になると、農薬を使わない露地のイチゴができる。
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