

消費者庁は4月18日、遺伝子組み換え表示制度の見直しに向けた検討会を4月26日に開催すると発表した。傍聴が可能だが、多数の傍聴希望が予想されるとして、1団体1人の申込制限をつけている。多数の場合は抽選ともしている。この消費者庁の検討会は今年1月、共同通信などが報じていたもの。
同時に公表された開催要領では、「表示義務品目の検証結果及び諸外国の表示制度等を参考に、事業者の実行可能性を確保しつつ、消費者が求める情報提供を可能とする制度設計の検討を進め、平成29年度末を目途に取りまとめを行う」としている。食品メーカーが首を縦に振らない限り前には進まない検討会となっている。
・消費者庁, 2017-4-18遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンなどは昨年10月、全ての遺伝子組み換え食品に表示を求める署名約20万筆を消費者庁に提出した。この要求に対して消費者庁は、16年度に(1)表示対象品目に関する調査、(2)米国・カナダでのGM作物の日本向け流通実態調査(大豆とトウモロコシのみ)、(3)消費者意識調査を実施し、17年度に有識者による検討の場を設けると回答していた。
消費者庁が見直しに向けて検討会を立ち上げた点は評価できる。しかし、食品企業側からの抵抗も十分に予想される中、「事業者の実行可能性を確保しつつ」と予防線を張っている。
消費者庁が考えている表示義務の拡大範囲が問題だ。台湾が昨年から実施しているGM菜種原料のカノーラ油のような、現状では表示不用の食品まで拡げるのか、あるいは、韓国が2月より実施した全成分表示の方向に踏み込むのか。このあたりは注目点だ。業界からどんな反対があるのかも注目される。
昨年、義務的表示が法制化された米国でも、遺伝子組み換え表示制度の詳細な検討が進んでいると思われる。米国は、スマートラベル(携帯電話などでQRコード(二次元バーコード)を読み取り、製品の情報を得る)でもよしとしている。消費者庁の検討会は、米国の制度設計を横にみつつ進められるのではないか。また、その中で、実質的に情報を隠蔽するスマートラベル導入の件が出てくることも十分に予想される。
東アジアでは最も立ち遅れている日本
消費者サイドから見た日本の遺伝子組み換え表示制度は、東アジア4カ国だけで見ても大きく取り残されている。
台湾では、遺伝子組み換え大豆・トウモロコシについて、輸入時点での申告が必要で、関税コードが非遺伝子組み換えのものと別に指定されている。食品企業はそのコードで識別が可能となっている。台湾は一昨年、それまで5%だった混入率を3%に規制を強化した。あわせて、豆腐のように、市場などで包装しないで販売される食品や、日本が義務表示から除外している食用油などについても義務的表示の対象とした。
韓国は今年2月、かねてより消費者団体から要望の強かった全成分表示に踏み切った。
韓国 | 中国 | 台湾 | 日本 | |
---|---|---|---|---|
混入率 | 3% | ― | 3% | 5% |
全成分表示 | ○ | ○ | ○ | 上位3位以内かつ重量5%以上 |
義務表示 | 一部 除外 |
全成分 | 全成分 | 食用油など不要 |
国際的には、60カ国余りで何らかの遺伝子組み換え表示制度がある。意図せざる混入率についてみると、EUが0.9%、オーストラリアやブラジルなどが1%である。この点でも日本の混入率5%はとても高いところに設定されているのが実情だ。
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