台湾・衛生福利部食品薬物管理署は先ごろ、2016年の輸入食品検査統計を発表した。不合格の上位には、日本産のシソやミカンが入っていると注記で指摘した。いずれも残留農薬が、日本より厳しい台湾の残留基準値を超えていることによる。日本では問題にならない残留値でも違反となっている。この違反状況は、日本の残留農薬の様相の一端を知る手がかりになる。
発表によれば、検査した約5万3千件(検査率7.8%)のうち残留農薬や重金属などの基準値オーバーにより915件が違反したとしている。中でも生鮮冷蔵冷凍野菜は5.89%、生鮮冷蔵冷凍果物は3.38%が基準値をオーバーした。違反の多い品目として、日本のシソの葉とミカンを挙げている。
台湾・食品薬物管理署は毎月の違反事例をまとめて公表している。このデータを日本の食品安全委員会がデータベースに登録している。このデータによれば、2016年に日本産の野菜、果物、茶、米などで、台湾の残留農薬基準値を超えた件数は34品目100件に上る。
残留農薬が基準値オーバーとして検出された食品は、一つの品目でも複数の農薬が検出される場合もあり、延べ144件、検出された農薬は40種類に達している。中でもネオニコチノイド系が延べ38件と約4分の1をしめ、日本での出荷量トップのジノテフランが延べ28件と群を抜いて多い。台湾で違反の多いシソの葉、ミカン、茶は、国内での使用も多いにもかかわらず、緩い日本の残留基準値により表ざたにならないだけだろう。
品 目 | 違反件数 | 検出農薬延べ種類 |
---|---|---|
シソの葉(大葉) | 13 | 32 |
ミカン | 16 | 34 |
茶 | 15 | 21 |
農 薬 種 別 | 種類数 |
---|---|
殺菌剤 | 12 |
殺ダニ剤 | 4 |
殺虫剤 | 24 |
うち ネオニコチノイド系 | 5 |
有機リン系 | 3 |
ピレスロイド系 | 3 |
・衛生福利部食品薬物管理署, 2017-4-12 ・フォーカス台湾, 2017-4-14
台湾の輸入食品の残留基準値オーバーは、同署の公開しているデータベースで検索できる。国別、品目別、検索期間指定が可能となっている。日本の場合、月ごとにエクセルファイルで公開という遅れた状況にある。
・衛生福利部食品薬物管理署輸出先の残留基準に合わせるように指導する農水省
農産物の輸出を増やそうと力を入れている農水省はこれまでに、イチゴと茶について、輸出先の残留農薬基準に合わせた農薬使用を行うようにマニュアルを作成し、産地での説明会を開いて「指導」している。ミカン、リンゴ、ナシ、茶については、アジアや欧米各国の農薬残留基準値の比較データをまとめている。
・農水省残留農薬基準が厳しい国に向けた栽培ができるのであれば、わざわざ輸出することなく、「農薬に厳しい2-12-1国基準をクリア」と差別化して国内で販売すればいいはずだが、そうした話はトンと聞かないのはなぜだろうか。
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