最終更新日:2017年7月25日
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2017.07.25 No.839
■理研 エタノールの作物耐塩性強化を発見 遺伝子組み換えは不要

 つい先ごろ酢が作物の耐干ばつ性を強化すると発表したばかりの理研は7月3日、横浜市大との共同研究でエタノールが植物の耐塩性を高めることを発見したと発表した。この効果により作物の耐塩性を強化し、収量増につながることが期待されるとしている。酢とかエタノールといった安価でありふれた資材を使った「ローテク」が、遺伝子組み換えのような「ハイテク」を超えている。

 発表によれば、この研究はシロイヌナズナとイネを使ったもので、エタノールで処理することにより、活性酸素の蓄積が抑制され、耐塩性が強化されるという。遺伝子発現解析の結果、高塩分によるストレスによって発生する活性酸素を除去するように働く遺伝子群の発現が、エタノール処理によって増加することが分かった、としている。研究結果は、Frontiers in Plant Science誌電子版に発表された(オープン)。

 理研は発表で、かんがい設備が経済的に困難な地域などで、この研究を応用し、エタノールのような安価な資材で農作物を塩害に強くする肥料の開発や収量の増加が期待できるという。世界のかんがい農地の約20%で塩害が発生しており、作物の成長や収量に大きな被害が生じているという。

 ・理化学研究所, 2017-7-3  ・Frontiers in Plant Science, 2017-7-3

 国連大学の評価によれば、塩による灌漑地の被害は世界の20%に及んでいるという。その作物の収量減による経済的損失は年間273億ドル(約3兆円)に達しているという。被害は作物の収量ばかりだけでなく、人の健康や雇用にも影響を及ぼしていると分析している。

 ・国連大学, 2015-1-5

 世界的には、耐塩性を強化した遺伝子組み換え作物の開発も試みられているというが、実用化されたとは聞かない。日本でも筑波大学などが、遺伝子組み換えにより耐塩性強化のじゃがいもやユーカリの開発と試験栽培を行っているという。これらはいずれも試験栽培段階でとどまっている。

 今回の理研などの研究は、環境にも生物多様性にも大きな影響を与えるとは思われない。先ごろの酢による干ばつ耐性強化機能の発見とともに、その応用が期待される。

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