EUで登録延長が問題化している除草剤のグリホサートについて、フランス政府は2022年に禁止することを決めた。この方針を政府スポークスマンが語ったとAFPが報じた。段階的に規制し、2022年に禁止するというもの。フランス政府は、グリホサートに代わる除草剤開発予算として5年間で50億ユーロの予算を確保する方針も明らかにしたという。
・AFP/Phys, 2017-9-25グリホサートはEUでも最も一般的な除草剤であるが、2015年の国際がん研究機関(IARC)による「おそらく発がん性がある」とする分類により、その使用禁止を求める声が大きくなっていた。
EU委員会は10月、グリホサートの農薬登録延長に関する会合を開き、加盟国の投票により10年間の登録延長を目指している。このEU委員会の方針に対しフランス政府は8月30日、登録更新に反対すると発表している。9月25日にも首相声明を発表し、反対を再確認した。
・Euractiv, 2018-8-30 ・Reuters, 2017-9-25フランスでは、グリホサート禁止による農業への影響が穀物関連で11億ユーロ、ワイン関連で9億ユーロに達するとして、農業団体は更新延長を強く主張し、政府に反対しないように要請している。
・Reuters, 2017-9-15EUにおけるグリホサートの農薬登録は2015年6月、延長について加盟国の特定多数による賛成を得られなかったEU委員会が18か月の暫定的な登録を行っていた。その期限は今年年末で切れる。ドイツやフランスのように人口の多い国が登録延長の賛否の鍵を握る。前回の投票でフランスはドイツとともに棄権していた。24日に総選挙が行われたドイツは、投票態度を明らかにしていない。賛成も反対も特定多数に達しない場合、EU委員会は登録を強行するかもしれない。
しかし、今年1月に始まったグリホサートの禁止などをEU委員会に求める法的な市民発議の署名は、要件の100万人を超える130万人余りの署名が集まっている。来年1月が期限の市民発議が成立した場合、EU委員会は公聴会を経て何らかの措置をとらなくてはならない。
EUにおけるグリホサートの登録延長の先行きは分からなくなってきている。EU加盟国の中にはベルギーやスウェーデンのように、グリホサートの個人使用の禁止に踏み込んだ国も出てきている。フランス以外の国の反応は、まだ明らかではなく、今回のフランスの全面禁止の方針が、他の加盟国に波及するかはまだはっきりしていない。
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