農水省は9月22日、農研機構が開発した遺伝子組み換えカイコについてカルタヘナ法による一般使用を承認した。この遺伝子組み換えカイコは、オワンクラゲの遺伝子を組み込み、作り出す生糸が緑色の蛍光色を発色するというもの。遺伝子組み換え動物の一般使用の承認は日本で初めてとなる。これまでのように隔離された飼育場ではなく、条件付とはいえ一般の農家での養蚕が可能となる。これまでに隔離飼養場での試験飼養が6回行われていた。このカイコが、衰退した日本の養蚕にとってカンフル剤となるのだろうか。
・農水省, 2017-9-22この遺伝子組み換えカイコは、孵化後3齢まで農研機構などで飼育した後、一般の養蚕農家で繭になるまで飼育されるという。その後、繭から絹糸を取り、商品化されるという。特別な隔離施設ではない養蚕農家での飼育では、この遺伝子組み換えカイコが逃げ出して、野生のクワコと交雑する可能性があり得るが、申請した農研機構はこの可能性はほとんどないとし、農水省もこれを承認している。また、飼育場にはネットを張り、周辺にホルモントラップを設置し、モニタリングを行うとしている。
10月から農家での飼育を開始
農水省の承認を受けて群馬県は9月25日、前橋市の養蚕農家で10月5日より、この遺伝子組み換えカイコの飼育が始まると発表した。
日本農業新聞によれば、群馬県蚕糸技術センターが飼育した遺伝子組み換え蚕12万頭を前橋市内の養蚕農家1戸に引き渡すという。できた繭は長野県の製糸会社が生糸にし、京都市のメーカーが全量をインテリア素材として商品化するとしている。
・群馬県, 2017-9-25 ・農研機構, 2017-9-25 ・日本農業新聞, 2017-9-26農水省のまとめた「養蚕の動向」によれば、2015年の養蚕農家は368戸。繭の生産量も135トン。2005年の1590戸、生産量626トンから、10年で約8割減と急落している。生糸の需要も10年で3分の1程度にまで激減している。
農研機構によれば、こうした蛍光色の絹糸により、商品の差別化を図り、衰退した日本の養蚕・生糸産業について「新たなカイコ産業の創出と地域経済の発展に貢献」しようというものだという。「負のスパイラル」に陥り、養蚕農家も数百軒にまで減少している中で、こうした遺伝子組み換えカイコによる機能性シルクがカンフル剤となるかは分からない。養蚕が再起するほどの需要があるのだろうか。
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