9月27日に開かれた第5回遺伝子組み換え食品表示検討会は、一部委員から「現行制度の維持するだけで検討会の意味がない」という発言が出るほどに、拡大反対派の「科学的検証性」が幅を利かせ、義務表示対象の拡大もなく、混入率も5%据え置き、表示は上位3位までという現行制度を維持するだけの終わることがはっきりした。湯川座長の取りまとめに、終始事業者サイドに立って発言してきた武石委員(食品産業センター)が笑みを浮かべ、うなずく姿が象徴的だった。残念ながら、「消費者の知る権利」「消費者の選ぶ権利」にとっては、大きな失望しかない検討会の行く末がはっきりしたといえる。
この日、事務局の消費者庁より、表示義務対象範囲と表示方法について4項目の論点整理案が示され、論点1と2について議論された。
これまでに3回の消費者と事業者からのヒヤリングが行われた。消費者側からは、表示対象の拡大と混入率の引き下げを求める意見が出されていた。一方、事業者側は、科学的検証性と表示にかかるコスト、表示スペースの問題などから、ほぼ一貫して現状維持の意見が述べていた。特に、加工によって組み込んだDNAが検出できないとされる食用油やしょう油について、検証ができないことを理由として対象品目から外すよう主張していた。
この日の議論でも、江口委員(日本スーパーマーケット協会)や武石委員などの事業者側の委員から、科学的検証性の確保や表示スペースの問題を主な理由として現状維持の意見が出されていた。武石委員は、遺伝子組み換え表示がアレルギー表示のような安全に関わるもではないことをあげて、暗に表示そのものが不要と示唆しているとも取れる意見を述べた。
消費者側の夏目委員(全国地域婦人団体連絡協議会)は、EUや韓国から比べても高い混入率の引き下げを求め、澤木委員(全国消費生活相談員協会)も、少なくとも韓国並み(混入率3%、全成分表示)にすべきだという意見を述べたが、大勢とはならなかった。
こうした拡大に否定的な議論に、神林委員(全国農業協同組合連合会)は、「このままでは、現行制度を維持になるだけで検討会の意味がない」として、現在表示の対象となっていない食用油やしょう油などに対象を拡大し、意図せざる混入率の引き下げる議論をするべきとの意見を述べたが、後に続く議論がなかった。
この日の検討会は、湯川座長が「実行性や表示の問題から現状維持」とする論点1と2についてのまとめを示し、「異議あり」の声もなく終了した。「消費者の知る権利」は先に進むことがないことがはっきりした。現在検討されている米国の表示制度がどうなるかは分からないが、世界的にももっとも立ち遅れた遺伝子組換え食品表示制度が維持されることが決まったといえる。「検討会の意味がない」という神林委員の痛烈な一言が耳に残った。
・消費者庁, 2017-9-27混入率5%の根拠はコーデックスの表示基準
議論の中で立川委員(名古屋大学大学院教授)から、混入率5%の根拠についての質問があり、事務局はコーデックスの「包装食品の表示に関するコーデックス一般規格(CODEX STAN 1-1985)」の2種類以上の原材料表示に関する規定(4.2.1.3)を準用して決められたと回答した。この規定では、2種類以上の原材料からなる製品について「構成割合の5%に満たない場合は、その原材料を表示する必要はない」と規定している。
・コーデックス意図せざる混入率 | 対象品目 | |
---|---|---|
日本 | 5% | 食用油などを除外 |
EU | 0.9% | 全て |
オーストラリア ニュージーランド |
1% | |
韓国 | 3% | 食用油などを除外 |
台湾 | 3% |
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