日本消費者連盟(日消連)と食の安全・監視市民委員会は10月3日、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(GM表示検討会)の強引な「まとめ」に抗議するとともに、「消費者の権利」に立った丁寧な議論を求め、「まとめ」を白紙に戻し議論をやり直すよう求める抗議・要請文を消費者庁などに送った。
4月より始まったGM表示検討会は、これまでに3回の関係者ヒヤリングを実施してきた。5回目となる9月27日の検討会で、消費者側委員から表示対象の拡大や混入率の引き下げを求める意見が出される中、ほとんど議論もなく「現状維持」とする強引な座長「まとめ」が示された。委員の中からは、「このままでは検討会の意味がない」という意見も出るほどであった。
消費者庁は自ら、その使命を「消費者行政の『舵取り役』として、消費者が主役となって、安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する」こととしている。行動指針では「消費者・生活者の視点に立ち、国民全体の利益を考えます」と宣言している。しかし、第5回GM表示検討会の強引なやり方は消費者の意見を無視し、事業者の要求を全面的に受け入れたものだった。自ら規定した使命や行動指針に逆行し、「業界庁」と改名したほうがよいとも思えるようなものでもあった。消費者庁は、その名に恥じぬよう、その使命に立ち返ることが必要だ。
日消連と食の安全・監視市民委員会は抗議・要請文で、こうした唐突で強引な「まとめ」に対して抗議するとともに、現行の表示制度の問題点や改善点について丁寧に検証し改めて議論するように要請した。
日消連事務局長の纐纈さんは、「多数決で決めるような事柄ではない。「まとめ」を白紙に戻してきちんと議論するべき」で、「“できないから”ではなく、消費者に分かりにくい表示を“どうしたらできる”のかを考えることが必要だ」と語った。
・日本消費者連盟, 2017-10-3以下、全文を転載する。
2017年10月3日
消費者庁長官 岡村和美様
遺伝子組換え表示制度に関する検討会座長 湯川剛一郎様
遺伝子組換え表示制度に関する検討会委員各位
抗議および要請
2017年9月27日に行われた「第5回遺伝子組換え表示制度に関する検討会」の議論および座長の「まとめ」に抗議するとともに、現行の表示制度の問題点や改善点について丁寧に検証し改めて議論することを要請します。
同日の検討会では、一部の委員から「消費者が誤解するような現行の表示制度は問題である」といった意見や、表示対象の拡大や混入率の引き下げを検討すべきとの要望が出されました。6月開催の第2回検討会でも消費者団体等ヒアリングにおいて「消費者が誤解することのないよう、すべての食品に表示を義務付けるべき」や「消費者の権利を保障する表示制度にすべき」という意見が述べられました。その際、全食品を表示義務対象とし許容率を0.9%としているEU(欧州連合)の例も紹介されました。EUの全食品表示や混入率について、「EUで可能なことが日本でできないはずはない」という意見があったにもかかわらず、それの検証も行わずに「食料自給率が高いEUとは事情が違う」などと結論付けるのは乱暴すぎます。混入率問題についても、「日本の5%は高すぎる。引き下げるべき」との消費者代表意見について、何ら具体的な検証は行われていないのは問題です。第5回検討会で委員から意見が出ていたように、現行の制度のままでよしとするなら検討会を行う意味はありません。
現行の表示制度の問題点について十分な検証を行うことなく議論を進めた上、座長が「表示義務対象範囲は現状維持」と結論付けたのは問題です。前述のように委員から現行制度には問題があり、検討が必要という意見が出ていたにもかかわらず、それを無視した座長の「まとめ」に抗議するとともに、消費者庁には第5回検討会で行われた「表示義務対象範囲」に関する議論を再度行うよう求めます。その際には、科学的検証のみで議論するのではなく、組み換えられたDNA等が検出できないしょう油や油にも表示をしている事業者から実態を聞き取るなどして十分な資料を準備してください。
消費者庁の使命は「消費者行政の『舵取り役』として、消費者が主役となって、安心して安全で豊かに暮らすことができる社会を実現する」ことです。消費者庁には、事業者団体等が主張する「これ以上の表示はできない」ではなく、「遺伝子組み換え食品を食べたくなければ避けられる表示」「消費者の権利を保障する表示制度」をどうすれば実現できるかという視点で議論が行われるよう求めます。また、検討会座長および委員のみなさまには、消費者の権利としての表示制度のあり方についてきちんと捉え、「まとめ」を白紙に戻して、改めて議論いただくよう要請します。
以上
特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
共同代表 大野和興
食の安全・監視市民委員会
代表 神山美智子
【関連記事】
- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増