EU委員会は12月15日、バイエルのモンサント買収に関し、バイエルがより重要な譲歩をしないかぎり買収を認めない方針を正式に伝えた、とPoloticoが報じた。EU委員会からの公式の発表ではなく、関係者2人の話だとしている。Politicoによれば、この通知は「ブリュッセルの最後通牒」だという。今回のEU委員会の通知に関し、EU委員会、モンサントともにコメントはしていないという。12月8日にはブルームバーグが関係筋の話として報じていた。
ウォール・ストリート・ジャーナルは今年8月、EU委員会は、買収により世界的にも最大手の2社が合併することに「重大な懸念」があると報じた。EU委員会競争政策担当のマルグレーテ・ベステアー委員は「実効性のある競争環境を確保する必要がある」と述べたという。EU委員会関係者はまた、農家にとって種子や農薬の選択肢が少なくなり、価格の上昇することなどを指摘したという。
バイエルはこれまでに、承認を得るために関係国の付けた条件により事業売却を進めてきていた。今年10月には、ドイツの農薬メーカーBASFに対して、除草剤グルホシネート(商品名バスタ)に関する事業やナタネ、ワタ、大豆などの種子事業を59億ユーロで売却すると発表している。三井物産もモンサントの一部の農薬事業を100億円で買収している。「最後通牒」の内容が明らかになっておらず詳細は分からないものの、EU委員会はこれまでのバイエルとモンサントの事業売却が不十分だとみている模様だ。EU委員会の最終決定は18年3月だという。
このバイエルのモンサント買収は、欧米の農業団体や環境団体の強い反対を招いた。欧州では数十万人が買収反対に署名し、EU委員会には5万通以上の要請書が届けられたという。
バイエルのモンサント買収とともに農薬・種子大手の合併と買収が相次いだが、中国化工によるシンジェンタ買収とダウとデュポンの合併はいずれも完了している。
・Politico, 2017-11-16 ・Bloomberg, 2017-12-8 ・Reuters, 2017-12-9 ・日経, 2017-10-13 ・ウォール・ストリート・ジャーナル, 2017-8-23【関連記事】
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