農水省は12月25日、新たなネオニコチノイド系農薬スルホキサフロルについて、新たにダウ・アグロサイエンスなど3社の6種類を農薬登録した。同時に厚労省も25日、スルホキサフロルの残留基準値を官報で告示した。スルホキサフロルは2016年3月、米国で承認取り消しを受けて、厚労省審議会での承認作業が中断したが、2017年2月、米国での再登録を受けて再開していた。
・農水省, 2017-12-25 ・厚労省, 2017-12-25 ・厚労省, 2017-12-25
残留基準値に関する意見公募(パブリックコメント)は2回行われ、1回目に537件、2回目には386件の意見が寄せられたという。その意見の多くが反対だったという。今年5月には、反農薬東京グループなど4団体で構成する「ミツバチと子どもをまもる実行委員会」が約8千筆の承認反対署名を提出していた。こうした多くの反対の声も届かず登録・承認された。なんとも無粋な「メニー・クルシミマス・プレゼント」。
グリーンピース・ジャパンは26日、「私たち消費者や養蜂家、科学者を含む市民は、1000件以上のパブリックコメントや約8,000筆の署名をとおし、厚労省に対して危険な農薬はいらないと何度も訴えてきました。今回の決定は、その市民の度重なる声や科学的意見を無視するもので、容認しがたい結果です」と、スルホキサフロルの承認を非難する声明を発表した。声明はまた、「世界では、ネオニコチノイド系農薬の規制が進み、自然と調和し人々の健康を第一においた有機農業や自然農法などの生態系農業が広がっています。政府は、危険な農薬の使用拡大をやめ、生態系の力を生かす農業を支援するべきです」と政策転換を求めた。
・グリーンピース・ジャパン, 2017-12-26 ・反農薬東京グループ米国はスルホキサフロルの再登録にあたり、かんきつ類やウリ科野菜(キュウリなど)への使用禁止、リンゴやナス科野菜(トマトなど)への開花期の使用禁止を条件とした。しかし農水省は、米国と使い方が違うとして、開花期規制などを盛り込まなかった。残留基準値を審議する薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)では、こうした点は問題とされず承認された。残留基準値は、白菜、ブロッコリー、コマツナ、レタス、ホウレンソウなど、よく食べる葉もの野菜の残留基準値が6ppmと高く設定されている。
2018年9月からネオニコチノイド系農薬の使用禁止を決めたフランスでは、スルホキサフロルは協議のネオニコチノイド系ではないとして登録されたが、行政裁判所は今年11月に環境NGOの訴えを認め、一時差し止め命令を出している。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増