日本弁護士連合会(日弁連)は12月21日、予防原則に立ちネオニコチノイド系農薬の禁止を求める「ネオニコチノイド系農薬の使用禁止に関する意見書」を取りまとめ、農水大臣へ提出したと発表した。日弁連は意見書で、次の3項目を要求している。
- 新規のネオニコチノイド系農薬の登録を保留すること
- 農薬取締法を改正しネオニコ系とフィプロニルの登録停止、販売と使用を禁止をできるようにすること
- 当面、農取法の改正を待たず速やかに次の措置をとること
- (1) クロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリド、アセタミプリド、フィプロニルを再登録しないこと
- (2) ネオニコ系農薬の使用削減のために、農産物規格規程の着色粒規定の廃止と、斑点米カメムシ類への指定有害動植物の指定解除
意見書の中で、ミツバチや他の昆虫や生態系への影響だけでなく、ヒトの健康への影響についても言及している。これまでの研究成果を引用して「ネオニコチノイド系農薬については胎児・子どもの発達に有害なニコチンに類似した構造を持つことから胎児・子どもへの発達神経毒性の懸念があること等を勘案するならば、到底安全であると断定できるものではない」として、早急な措置を求めている。生態系やヒトの健康に対する影響懸念がある以上、予防原則に立って禁止を求めることは当然のことだ。
・日本弁護士連合会, 2017-12-21日弁連が意見書で、農産物規格規程の着色粒規定の廃止を求めていることも重要な点だ。日本におけるネオニコ系農薬の使用量を増大させている原因の一つとして、かねてより農産物規格規程の着色粒規定の存在が指摘されている。1千粒に1粒(0.1%)までで1等米、2粒で2等米とランクされ、たった1粒で500円前後の等級価格差がつく。この「500円の等級価格差」も「ウソ」だという指摘もあるが、このことから、斑点米カメムシ類の防除目的にネオニコチノイド系農薬が過剰に使われているという。しかし、斑点米は色彩選別機を使うことで除去が可能で、斑点米が消費者の目に触れることはないし、たとえ混入していたとしても味は変わらない。消費者からすれば、全く意味のない規定ということになる。
日弁連の意見書でもう一つ重要な点は、着色粒規定と対をなす、「斑点米カメムシ類に対する指定有害動植物の指定解除」を求めている点だ。2000年に斑点米カメムシ類が指定有害動植物に指定され、翌2001年に農水省は斑点米カメムシ類の防除指導を徹底するように各地方農政局に通知している。このころからネオニコ系農薬の使用が増えてきている。この間、反農薬東京グループなどが、この「指定有害動植物の指定」の根拠の開示を求めてきたが、農水省は一貫して該当文書が存在しないという無責任な回答に終始している。全く根拠もなく指定したことすら疑われる。
・米の検査規格の見直しを求める会日弁連が速やかな措置を求めている着色粒規定の廃止と斑点米カメムシ類への指定有害動植物の指定解除が、日本におけるネオニコ系農薬の使用量削減を実現する第一歩になる。農家とて、コストアップとなる農薬を使う理由はないからだ。フランスは来年9月からネオニコ系農薬の禁止に踏み切るなど、世界的にもフィプロニルやネオニコ系農薬は禁止の方向に動き出している。
生き物共生農業を進める会など8団体は、ネオニコ系農薬の禁止を求める署名「農薬をむやみに使わないお米がいい!」を10月から始め、すでに5千筆余りの署名が集まっている。一部の生協では、ネオニコ・フリーの米の販売も始まっているなど、ネオニコ系農薬禁止の声は着実に広がっている。
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