理学研究所などの研究チームはこのほど、酢酸を与えることで、遺伝子組み換え技術を使うことなくシロイヌナズナの耐干ばつ性が強化されることを発見し、ネーチャー・プランツに発表した。この効果はシロイヌナズナのほかにも 、菜種、トウモロコシ、米、小麦で確認したとしている。
カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA:Office of Environmental Health Hazard Assessment)は6月26日、グリホサートについて、7月7日付で同州の「プロポジション65」の発がん性物質リストに登載すると発表した。これによりグリホサートを含む農薬などは、使用者や消費者に向けて注意文言必要となる。こうしたグリホサートに関する公的機関による発がん性の認定や注意表示は、おそらく世界でも始めてのケースだという。
強まる環境リスク懸念
カナダ・プリンス・エドワード・アイランド州政府は6月19日、地元住民の反対を押し切り、アクアバウンティ社の遺伝子組み換えサーモン養殖施設の建設を認可した。養殖施設は、カナダ南東部の大西洋に面したセントローレンス湾にあるプリンス・エドワード島に建設される。これにより施設の不具合や破損によって遺伝子組み換えサケが逃げ出し、環境汚染を引き起こすか懸念が高くなったといえよう。
米国連邦地裁は6月23日、シンジェンタに対してトウモロコシ農家の受けた損害として2億ドル余りの支払いを命ずる判決を下した。米国・カンザス州などのトウモロコシ農家が、中国で未承認の遺伝子組み換えトウモロコシの種子を販売したことより損害を受けたとして、損害賠償を求め集団で提訴していた。シンジェンタは上訴するという。
グリーンピースは6月23日、グリーンピース・オランダが入手した日本とEUとの経済連携協定(日欧EPA)関連の文書を公開したと発表した。公開された文書は、2016年後半から2017年初頭にかけてのもので205ページに及ぶ。
厚労省は6月21日、小麦などの残留基準値を大幅に緩和したグリホサートの食品中の残留基準値案に関する意見公募を始めた。締切りは7月20日。厚労省は、今回の改正について今年8月ごろに公布し、実施する予定としている。
消費者庁が進める遺伝子組み換え表示制度検討会の第2回会合が6月20日開かれ、消費者団体など4者からのヒヤリングと意見交換が行われた。意見陳述では4者からは、現行の遺伝子組み換え表示制度がうまく機能していないことが指摘された。議論の中で、今回新たに「遺伝子組み換えでない」(Non−GM)表示を認めるならば不検出に限るべきだという主張がなされた。また、表示拡大した場合、検出可能性ともにコストアップの負担をどうするかという論点も示された。原則的な「消費者の知る権利」からではなく、検証可能性のような技術的な点からの意見、議論が多かったのは残念だ。
米国の有機食品を中心にしたスーパー大手のホールフーズは6月16日、米ネット通販大手のアマゾンに137億ドル(1兆5千億円)で買収されると発表した。買収したアマゾンのジェフ・ベゾスCEOは、「何百万人もの人々がホール・フーズが好きだ。最高の自然食品と有機食品を提供している。それを続けて欲しい」とコメントしたという。
農薬・種子大手のダウとデュポンは6月15日、米国司法当局より一部農薬と化学品事業の売却を条件に合併を承認されたと発表した。デュポンとダウの発表によれば、両社はすでに欧州やブラジル、中国などの承認を得ていて、2017年8月までに手続きを完了させるとしている。両社は2016年2月、対等合併で合意していた。
主要種子法廃止法案は4月14日の参議院本会議で可決され成立した。これにより来年3月31日もって主要種子法が廃止される。このことについて元農水大臣の山田正彦氏は、「既に遺伝子組み換えのコメの種子「WRKY45」等70種が政府に認められ、作付の申請があれば、承認されるばかりになっている」とフェースブックで述べている。はたして来年から遺伝子組み換えイネの商業栽培が始まるのか。その可能性はほとんどないのではないか。
世界一の砂糖生産国のブラジルはこのほど、サトウキビの害虫であるサトウキビメイガ(Diatraea saccharalis)に抵抗性のある遺伝子組み換えBtサトウキビの商業栽培を承認したという。
フライドポテトや惣菜向けか
食品安全委員会は5月30日、米国・シンプロット社の遺伝子組み換えジャガイモは「ヒトの健康を損なう恐れはない」とする評価を正式に決定し、厚労省への通知を決めた。近く厚労省は承認すると思われる。この遺伝子組み換えジャガイモは、生物多様性での申請がないところから、承認後は冷凍品などの形で輸入され、フライドポテトや惣菜に加工されるのではないか。
目的外の数百の遺伝子に変異
狙ったところだけを確実に遺伝子操作できるかのように喧伝されているCRISPR-Cas9技術だが、予想外の大規模な変異を引き起こしていることが明らかになった。米国コロンビア大学などの研究チームはこのほど、遺伝子操作をを格段に改善するといわれているゲノム編集技術CRISPR-Cas9が、生体内で予期せぬ数百の突然変異を引き起こししている、とする研究をネーチャー・メソッドに発表した。これまでコンピュータ・シミュレーションで予想された箇所以外で変異が起きていたという。
EUでは今、除草剤や殺虫剤について農業以外での使用禁止の流れが少しづつ動き出している。フランス元老院(上院)はこのほど、EUに対して、農業以外での農薬使用禁止の法的規制の調査を求める決議を全会一致で決議した、と国際農薬行動ネットワーク・欧州とジェネレーション・フューチャーが歓迎する声明で伝えた。
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