最終更新日:2018年03月20日
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2018.03.20 No.903
■ネオニコ系農薬:ヒトへの影響にも調査・研究を アクト・ビヨンド・トラストが公開プレゼン
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アクト・ビヨンド・トラスト公開プレゼン=3月18日、東京

 ネオニコチノイド農薬に関連した市民活動や研究者への助成を行っているアクト・ビヨンド・トラストは3月18日、18年度の助成に向けた公開プレゼンテーションを行った。一時審査を通過した6件の申請者が、その目的や得られる成果について説明した。このうち3件がヒトへの影響に関する調査・研究だった。ほかに、ミツバチのネオニコチノイド汚染ルート解明の研究、消費者の意識に迫る研究、国産鶏卵のフィプロニル汚染の実態調査の合計6件。18年度の助成は調査・研究に限定されたが、生態系に対する影響の調査・研究から、ヒトへの影響解明へテーマが移ってきているように思われる。

 「ネオニコチノイド系殺虫剤の母子間移行メカニズムの解明」の平医師(ネオニコチノイド研究会)は、ネオニコ系農薬は血中でヘモグロビンと結合し、胎盤を通過すると考えられるという。哺乳動物での挙動は、まだ研究が進んでいない。そのために、愛媛大学で冷凍保存されている日本サルのサンプルを使い、胎児への移行を調べたいという。発達障がいの子どもが急激に増えている原因としてネオニコ系農薬が考えられるので、その点をはっきりさせたいと強調した。平氏はまた、脳内でのネオニコ系の検出技術が確立したのはこの数年のことで、これまで検出できなかっただけのことであり、それが影響がないという論拠とはなり得ないとも指摘している。

 「哺乳類末梢・中枢神経系におけるイミダクロプリドの神経毒性発現メカニズムの薬理学的解明」の山國氏(東北大学)は、ネオニコ系農薬の一つイミダクロプリドがヒトに安全であるというのは「神話」にすぎないと指摘する。その科学的根拠の実態は、細胞での反応をたった1分ほど観ているに過ぎず、観察し切れていないという。その上で、脳の海馬細胞などでの低濃度での反応や毒性を調べ、イミダクロプリドの神経毒性を証明したいとしている。山國氏は16年度の助成を受け、24時間から48時間後に細胞内で起こる影響を検証した結果、イミダクロプリドが、単体で、しかも低濃度で副腎髄質細胞の遺伝子発現を増強しアドレナリン産生を促すことを明らかにした論文を専門誌に発表している。

 「有機農産物摂取による尿中のネオニコチノイド低減に関する調査研究」の長谷川氏(福島県有機農業ネットワーク)は、福島の有機農家と共同で、慣行農法の食品を食べている人と有機農家の体内のネオニコチノイドを具体的に調べたいという。その上で、慣行食品のヒトに有機食品を食べてもらいその濃度が減少すること実証したいという。そのデータによって、停滞している日本の有機農産物流通を増やす手立てともしたいとしている。

 農民連食品分析センターの「市販国産鶏卵のフィプロニル残留分析」は、昨年夏に欧州や韓国、台湾で明るみに出た鶏卵のフィプロニル汚染(エッグ・スキャンダル)の日本での実態をはっきりさせるためという。問題が明らかになった際、過去の具体的な検査データがない上に、厚労省は問題の鶏卵は輸入されていないとするだけで、日本での実態を調べようとはしなかった。そこで農民連食品分析センターは、独自に市販の鶏卵8銘柄を調べ、汚染がなかったことを明らかにしている。全く検出されないかもしれないが、助成を受けて、さらに検体を増やして調査したいという。質疑の中で、同センターの八田氏は、ネオニコ系やグリホサートも同時に検査したいとしている。

 「石垣島をケーススタディとした養蜂家蜂コロニーのネオニコチノイド暴露経路解析」の亀田氏(千葉工大)は、、石垣島の養蜂家と協力して、ミツバチがどこで、いつ、どのくらいのネオニコチノイド農薬の汚染されるのかを明らかにしたいという。花粉分析の点からも石垣島は適しているという。得られたデータにより、対策を立てて使わない方向にもっていくようにしたいとしているう。石垣島は、これからネオニコ系農薬が多く使われようとしているという。

 「ネオニコチノイドと暮らす:京都におけるネオニコチノイドを含有する家庭用品の使用状況、消費者動向・意識の探求」のマキシミリアン・スピーゲルバーグ氏(京都大学)は、家庭で使われるネオニコ系製品に着目し、消費者の使用状況や意識を把握し、立ち遅れている社会学的な分析を行い、市民や政策立案者へ提供しようという。

 どのテーマに選ばれるかはまだ発表されていないが、いずれのテーマもネオニコチノイド系農薬の環境やヒトへの影響を明らかにし、その使用を削減、規制する上で必要な調査・研究といえるだろう。公開プレゼンに先立ち、アクト・ビヨンド・トラストの星川代表理事は、規制強化の流れにある欧米と日本の農業の形態が異なっているので現場に即した調査・研究が必要であり、一次情報を市民に提供したいと述べた。成果は公開が原則であると強調されていたが、学術論文の場合、オープンアクセスにするとともに、市民に向けた日本語での理解を助ける解説が必要ではないか。

 ●一次審査を通過したテーマ(発表順)
  • ネオニコチノイド研究会
    「ネオニコチノイド系殺虫剤の母子間移行メカニズムの解明」
  • 農民連食品分析センター
    「市販国産鶏卵のフィプロニル残留分析」
  • 亀田豊
    「石垣島をケーススタディとした養蜂家蜂コロニーのネオニコチノイド暴露経路解析」
  • マキシミリアン・スピーゲルバーグ
    「ネオニコチノイドと暮らす:京都におけるネオニコチノイドを含有する家庭用品の使用状況、消費者動向・意識の探求」
  • 特定非営利活動法人福島県有機農業ネットワーク
    「有機農産物摂取による尿中のネオニコチノイド低減に関する調査研究」
  • 山國徹
    「哺乳類末梢・中枢神経系におけるイミダクロプリドの神経毒性発現メカニズムの薬理学的解明」

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