コロンビアのパスト高等裁判所は1月13日、政府が計画していたグリホサートの空中散布の再開計画の一時停止を命じた。コカの駆除に力を入れていたコロンビア政府は、トランプ前米国大統領の要求を受けて、昨年12月、21年からのグリホサートの空中散布再開を計画し、環境管理計画(EMP)を策定した。環境管理計画では6つの地域の104の自治体が対象とされていたという。
この空中散布再開の計画に対して、コロンビア南西部に位置するナリーニョ地域の先住民やアフリカ系の住民グループが中止を求めて提訴していたが、パスト高等裁判所は環境管理計画の停止を認めた。
グループは、地域社会への直接的な健康や経済的影響が未知数であるとして提訴していた。高等裁判所は、コロンビアの憲法に規定された、公的機関の行為や不作為によって基本的な憲法上の権利が侵害されたり、脅かされたりした場合に、その権利を直ちに保護するための措置である「チュテラ」を申立てていた。
コロンビアは1982年以来、コカの駆除に除草剤の空中散布を行ってきたが、2015年、当時のサントス大統領は空中散布を停止した。その後、トランプ米国大統領の要求でドゥケ政権は、グリホサートの空散再開に向けて動いていた。
グリホサートの空中散布は、散布地域の住民に健康被害をもたらしていた。コロンビア北西部で2018年までコカを栽培していた農家のへルナンデスさんは、03年と04年にグリホサートの空中散布を受け、健康被害は今も続いていると証言。飛行機から散布された除草剤は、霧のように畑に降ってきて、仕事をしていた農民の皮膚に炎症を引き起こし、出血するほどだったという。
昨年9月、コロンビアの性と生殖の権利センターとバジェ大学は、人権たる生殖に関する権利を侵害するとして、政府はグリホサート空中散布を再開すべきではないとする声明を発表していた。昨年8月には、コロンビア北西部で空中散布に反対していた地域リーダーの一人が暗殺され、右翼准軍事組織が殺害を示唆したと報じられた。
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