米国小売大手のウォルマートは4月13日、販売する生鮮食品について、全量を2025年までに総合的病害虫管理(IPM)を実施する供給業者から調達し、5種類のネオニコチノイド系殺虫剤と有機リン系の殺虫剤クロルピリホスの使用を供給業者が段階的に使用しないよう奨励すると発表した。
生鮮食品から排除の対象となるネオニコチノイド系の殺虫剤は、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフランの5種類に限定している。ネオニコチノイド系殺虫剤のフルピラジフロンとスルホキサフロは対象としていない。
一方でウォルマートは、生鮮食品で対象としていないフルピラジフロンとスルホキサフロルについて、販売する生花や植物でイミダクロプリドなど5種類のネオニコチノイド系殺虫剤に加え、この2つも使用しないよう奨励するとしている。また、業者が保有する土地の3%を花粉媒介生物の保護エリアとしての確保と報告も求めている。
・Walmart, 2021-4-13 ・Walmart米国の環境団体の一つであるFriends of the Earth(FoE)や、そのほかの米国の環境や農業団体、消費者団体は、ウォルマートなど米国の小売業界各社に、ネオニコチノイド系殺虫剤の排除を求めて運動していた。ウォルマートの発表を受けてFoEは4月13日、「100以上の環境保護団体、消費者団体、農家団体、農業従事者団体が、米国の食品小売業者に花粉媒介生物保護のための行動を促してきた長年にわたる活動の成果」であり、「米国の食品小売業者の中で最も広範囲に及ぶ、画期的な花粉媒介生物保護方針」と、ウォルマートの新たな取り組みを歓迎する声明を発表した。FoEは、この取り組みが「米国の消費者に新鮮な果物や野菜を供給している世界中の何千もの農場の栽培方法を変えることにつながります」と評価している。
FoEのケンドラ・クライン博士は、「世界中の科学者たちが警告しているのは、私たちが今“昆虫の黙示録”の真っただ中にいて、その大部分が有毒な殺虫剤によるということです。ウォルマートの方針は正しい方向への大きな一歩ですが、花粉媒介昆虫の40%が絶滅の危機に直面しており、花粉媒介昆虫が時間との戦いに敗れる前に、すべての小売業者が競争を加速させなければなりません」と、小売業界がさらに踏み出すよう促している。
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